雨の日に遊ぼう!! 中等部三年生の段 五時限目開始時刻。 もはや名物ともいえる光景がその教室の前では繰り広げられていた。 「図書室はこっちだ! 迷っている時間がもったいない!!」 「えー、図書室はこっちだろ」 「両方違う!!」 右手に三之助。 左手に左門。 そして真ん中に作兵衛。 それは中等部三年二組の顔ぶれ。 いつもの如く方向音痴の二人を制止する作兵衛の怒号が辺り一帯に響き渡っていた。 「もー!! 作が図書室に行きたいって言いだしたんだろう?」 「そうそう。だから俺か左門が連れて行ってやるって言ってんのに」 「お前らに連れて行かれたんじゃ、卒業するまでに図書室に辿りつかん!!」 動く事を漸くやめた二人から手を放し、作兵衛はその場でぜーはーと息をつく。 毎度のこととは言え、体力消費量は半端いないらしい。 「作は我がままだ」 「うん、我がままだ」 「俺の性格が捻じ曲がってるような発言をするなー!!」 「……人生なんとかありゃ、何とかもあるさ〜♪」 鼻歌の様な変な声が自分達に向けられていると気づいたのは、その人物が目の前に現れた時だ。 「こんな所で何してるんですか!? 先輩!」 「うろ覚え合唱大会」 「いや、そこを言っているんじゃないです」 「あ、先輩こんにちはー!!」 「こんにちは。そしてお久しぶりだね、神崎君」 「どうもっす。先輩」 「相変わらず縦に長いね、次屋君。こんちゃー」 「身長が高いって言って下さいよ」 「高いという言葉を言おうとすると持病の欠伸が出るのだよ」 「欠伸って持病じゃなんですか? それにやっぱり先輩も身長が低いの気にしてるんっすね」 「そうか。次屋君はこの三階から外に出たいのだね。お手伝いしよう」 「さり気なく窓の方に押さないでくださいよ、先輩」 本来なら年上の人間が加われば少しは緊張と言うものが漂う筈。 しかし、の場合はそれが起きにくい。なので、今の状況は同級生の男の子とじゃれている中等部のように見えるのだ。 「あの、先輩はどうして中等部の服を着てらっしゃるのですか?」 「え?」 面白そうと言う理由で加わった左門と一緒三之助の背中を押していたは、今日何度目か分からないその質問には暫く考えて、苦笑しながら答える。 「えーと……立花先輩の趣味、かな?」 「立花先輩ってロリコン趣味あったのか!?」 「神崎君。今さり気に酷い事言わなかったか? 君」 「だって先輩と言う容姿の人に中等部の制服着せるなんて、そう思います!!」 「あー、俺もそう思った」 「お前ら少し黙っとけ。……もしかしなくても立花先輩のおもちゃになってるんじゃないですか? 先輩」 「はは、その通りだ。富松君」 「やっぱり……」 他の二人は何だそう言うことかと頷いた。 まぁ、少しばかりの説明も悪かったのだからそう取られてもしょうがない。 「あの人は頭が良いのに、しょうもない事にもその頭を使うから厄介だと食満先輩に聞いた事があるので。あと、昼休みにしんべヱと喜三太からはあるい程度聞いています」 「流石食満先輩。よく手の内を分かってるらっしゃるね。そして一年生から噂が流れてきたか。確かに結構逃げてるもんな」 「……お疲れ様です、先輩」 あと数時間の辛抱ですよと富松に声をかけられ、は軽く男泣きをする。 この苦労を分かってくれるのが嬉しかったようだ。 「……誰かと思ったら先輩ですか」 「はい? ……あ、伊賀崎君ではないか」 「こんにちは」 分厚い英語の辞書を持っての背後から現れた中等部は孫兵だった。 まじかで良く良く見てみると彼も中等部にしては若干背が高いらしく、をその高い位置から見下ろしていた。 「おー、孫兵。一組は自習じゃないのか?」 「一組『も』だろ左門。三人の声が聞こえたかと思ったら女子の声まで聞こえてきたから誰かと思って」 「おや。勉強の邪魔になっていたか。この場所も退散せねばならないかね」 「退散……ですか?」 「うむ。ちょっとした事情で立花先輩から逃げていてね。今は学園の至る所を周っているのだよ」 だから先輩がそんな恰好で中等部の校舎にいたんですか。 そう言って孫兵はどうして彼女がこの場所にいたかを納得した。 「木を隠すなら森の中と言う事で、中等部の方が比較的見つかりにくいんだ。だから、出来れば中等部に良いところがないかと思って……君たちは良いところ知らないかい?」 「……人の迷惑にならないところで良いんですか?」 「次屋君? まぁ、それが第一前提だね。見つかりにくくても皆の勉強の邪魔はしたくない」 「じゃ、そこの教室が良いですよ」 彼が指さした先にあった教室のプレートは『三年三組』。 言わずもがな、のマイスイートエンジェルの一人が所属するクラスだ。 「そう言えばさっき藤内と数馬しかいなかったな、って!! 先輩早っ!!」 富松が相槌を打つ前には飛び出していく。 「先輩、数馬の事別格に可愛がってるからじゃないかと思う。因みに僕は藤内に辞書返しに行くけど」 「おー! 俺も行く」 「私も行く!」 「……うん、俺も行くは。こいつら絶対に帰ってこれそうにない」 残った四人も三年三組の教室へと足を運んだ。 「マイスイートエンジェル!!」 「え? あっ、先輩?」 教室に入ると中には数馬と藤内の二人しか存在していなかった。 やはりここも高等部のC組と似たようなものらしい。落ち着いて勉強をしない人間の方が多いのだろう。 「はぁぁぁ……すさんだ心が癒される」 「わ、分かりましたから。くすぐったいです」 数馬の背中に抱きつくようにして、朗らかな笑みを零すに、若干はにかんだような笑顔を浮かべる数馬。 遠目からみれば本当に幸せそうな少女二人だ。 「相変わらず、先輩は数馬好きですね」 「愛でるものが好きなのだよ。そして、君は三組では珍しく自習か。藤内君」 「藤内は自主れんとか、自分を高める事が好きなんです」 数馬の傍らでを相変わらずな人だと少し笑いながら見ていた藤内。 その彼はちゃんと席に付いて勉強道具を広げた机に頬杖をしていた。 教室に入った時、数馬はその傍らで立ったまま何か雑談をしており、それにが飛び付いたのだ。 「自らやる事は良い事だよ。偉い偉い」 「あ、頭を撫でないでください!!」 「先輩からの愛だ。受け取りたまえ」 「え? あ、そっか。先輩は高等部でしたっけ。……? だとしたらなんで中等部の制服なんですか?」 「…………」 「…………」 「え、え? 何で先輩だけじゃなくて藤内まで落ち込むの?」 床に崩れさる。 机に突っ伏す藤内。 一体この教室に何が起きたと言うのだろうか? きっと遅れて入って来た四人もそう思ったに違いない。 「……数馬。なにがあったんだ?」 「ぼ、僕にもわからなくて。どうして先輩が中等部の制服を着てるんですかって聞いたらこうなった」 作兵衛が狼狽する数馬に思わず声をかける。 すこし異常な状態なのだ。なにか二人の周りの空気だけ。 「……先輩、大丈夫ですか?」 「お、おお……伊賀崎君か。大丈夫だよ。ただ少しばかり高等部である事を忘れられていた自分が寂しかっただけだ。どれだけ中等部に馴染んでんだよって感じでね」 「あ! すみません! 僕、気付かなくて。そうですよね、最初に中等部の制服の事気付くべきでした」 「いや、数馬君は悪くないよ。私も忘れてたくらいだし。それに、この中で一番私が中等部っぽいしね。身長も皆の方が高いし」 「おお。先輩が白くなって行くぞー」 面白ものを見るかのように傍観していた三之助が呟く。 それを聞いた瞬間、藤内がいきなり立ち上がった。そして、 「先輩! 本当にすみませんっ!!」 「藤内、どうしたんだ?」 なぜかの前で土下座する藤内に思わず左門が声をかける。 「わ、私がもう少し早く気づいていれば……」 「いや、藤内君も悪くないよ。だって、藤内君は最初に謝ってくれたじゃないか。それだけで十分だよ。だから、何も泣かなくても……」 「でもっ、でもっ!!」 すでに藤内の目からは少しだが涙が零れていた。 本当、彼は風紀委員会らしくない風紀委員だ。 「じゃ、こんど風紀で美味しい紅茶でも淹れてくれないかい? 私、藤内君の紅茶好きだから」 「え…… そ、そんな事で良いんですか?」 「そんな事って言うけど紅茶は難しいんだ。だからさ、お願いできるだろうか?」 多分、この時の藤内にはが神々しく光って見えていたのだろう。 「先輩ー!!」 「すまんね、そこまで悩んでくれているなんて知らずに。君は本当に風紀の良心だ」 思わずに泣きついた藤内に周りは目を丸くする。 一体、冷静な彼の身の上に何があったのだろうか? 「数馬。藤内は何があったんだ?」 「僕も良くは知らないんだ。ただ、朝先輩に迷惑かけたとしか聞いてなくて」 ふーんと床に座る二人を見ながら孫兵は頷いた。 「……だけど、先輩って何着ても似合うんですね。その制服も可愛くて似合ってます」 とりあえずその場を取り繕うために数馬がフォローに入る。 「私も似合うと思ったぞ」 「俺もー。何か違和感ない」 「私もです。最初見た時は先輩ではなく、ほかの同級生の女子かと思いましたから」 「右に同じく、です。……すいません、否定するべきなんでしょうが、似合っているので否定が出来ません」 続いて左門、三之助、孫兵、作兵衛もフォローに入った。と言っても、左門と三之助は自分の思った事を述べたまでだろう。 「み、みんなありがとうね……」 「泣くほど喜んでもらえたなら何よりだ!!」 それは違うだろと皆思ったが、誰もその言葉を言った本人である左門には言わなかった。 きっとは不甲斐ないと言うか、素直に喜べない自分に泣いているのだろう。 それが分かっているからこそ、それ以上は何も言えない。 「似合っていても、悲しい事ってあるんだなって思った。私にしてみれば、数馬君の方が似合うと思うんだが」 「ぼ、僕ですかぁ!?」 「うん。だって、これ中等部の女子制服……」 その時の頭がチーターの瞬発能力並みに動いた。 「よいせっ!」 「先輩! 何制服脱ごうとしてるんですか!」 その能力に最初に付いて行ったのは作兵衛。 日ごろから迷子二人の相手をしているお陰だろう。 「ええい! 離せ、離すんだ、富松君! 女は度胸と言うだろうが!」 「女は愛嬌ですよ! ちょ、藤内! 止めてぇぇぇっ!」 「はっ!」 半泣きになりながら富松は藤内に応援を要請。それを聞いて、漸く申し訳なさから帰って来た藤内もの腕に捕まる。 「先輩! 作の言うとおりです! 早まるのは止めてください!」 「藤内君。人間求めるものがそこにあると分かった瞬間、体は無意識のうちに動くのだ」 「それらしい事言わないでくださいよー! てか、本当に何しようとしてるんですか!」 「この制服を数馬君に着せる!」 「「はぁ!?」」 「え……」 当たり前な事を何故聞くと言う顔では二人を見る。 だが、到底理解できる筈がない。案の定二人と数馬はぽかんとしていた。 「だって、絶対に似合うよ!!」 「だからって目の前で脱がないでください!! 一応俺ら男子なんですよ!!」 「大丈夫! すぐ終わる!」 「大丈夫じゃないですって! それに数馬のスカート姿は確かに似合ってましたけど、先輩の方が似合ってますって!」 その言葉に漸くの動きが止まった。 「……今、なんと申した? 富松君」 「え? 先輩の方が似合って……」 「そうじゃない。その前」 「か、数馬のスカート姿は似合って……」 「な・ん・で・す・と!?」 思わず作兵衛の顔を両手で挟み、まじまじと目を見る。 今、物凄く大事な発言をされたような気がする。 「そう言えば、数馬が不思議の国のアリスやったな。あれ中二だったか?」 「中一だよ」 左門と三之助が懐かしーなと記憶を掘りこすと、がすかさず側へとやって来た。 「私まだ入学してない時か!」 「あー、そうなりますね。その年に学年でやった出し物です。注目を浴びる為に男子が不思議の国のアリス。女子がその年に流行った時代劇をやったんですよ。それで、一番女の子らしい数馬に白羽の矢が立ちまして」 「も、もうやめてよ三之助ー!! 恥ずかしかったんだから」 泣きそうな顔で三之助の口をふさぐ数馬。 しかし、今のにはそんな可愛らしいしぐさも目に入ってはいない。 「藤内君よ……」 「な、なんですか? 先輩」 「アリスの服は水色だったかい?」 「え? ええ。水色の……エプロンドレスって言うんですか? 白いエプロン見たいな奴が前面に出てる」 「……ガッテムッ!!」 完全にはそこで潰えた。 俺の屍を越えてゆくがよいと言わんばかりに。 「先輩!! 死なないでください!!」 「これが冷静でいられるかねっ!? 水色のエプロンドレスにあの紫のふわふわとした髪は映えただろう! なぜ中等部から入っていなかったんだ私!!」 「そんな先輩に耳よりジョーホー」 丸でやる気のない声を三之助が張り上げる。 「俺、その時の写真撮ってますよ。家に帰ればありますけど」 「マジですか!?」 「おおマジです。どうですか? 要りますか? 一枚三千円ですけど」 「何枚ある?」 「数馬単体が三枚、集合写真が一枚、色々なのと写ってるのが三枚くらいです」 「全部いただこう! 分割は出来るかい?」 「手数料掛ります」 「承知の上だ!」 「毎度ありー。明日持って、」 「いい加減にしろ!! この馬鹿!!」 かなり重めの拳骨が富松によって三之助の頭に落とされる。 ついでにこの時ばかりはも藤内に軽く叩かれた。 「先輩も度が過ぎてますよ。数馬泣きそうじゃないですか」 「おお……すまん。でも、見てみたかったんだよ。アリス姿の数馬君」 「そんなに見たければ私も持ってますから見せてあげます」 「ほ、本当に!?」 「嘘ついてどうするんですか」 「あ、ありがとうー!」 「うわっ! 僕は数馬じゃないんですから、抱きつかないでください!!」 珍しく照れている藤内を見て、漸くその場が和んだ。 本当に一時は(色んな意味で)どうなるかと思ったが、何とか落ち着いたらしい。 「そう言えば、先輩良かったんですか?」 「ん? 何がだね? 伊賀崎君」 「先ほど高等部の校舎に立花先輩の姿を見かけましたが」 「!?」 「もう来るのも時間の問題だと思います。こちらに気づいた様子だったので」 「…………じゃ! 皆今日はこれで! 藤内君、次の時写真見せてね!!」 「は、はい!」 「それではさらばだ、若人よ!!」 制服を翻し、は良い笑顔だけを残して中等部の校舎を後にした。 あまりの速さに六人はぽかんとしたが、直ぐに我に返る。 「先輩は元気が良いな! 迷わなければ良いのだが!!」 「お前じゃねぇし、んなわけあるかよ。三之助も写真売りつけるなよ」 「中学生はいつも金にも困ってるんだよ、作」 「ぼ、僕……あんまりあの写真見られたくないんだけど……見せるの? 藤内」 「あー……ごめん数馬。わかって」 「うわーん!! 藤内の馬鹿ぁぁぁ!!」 涙を流す級友の姿に今度は藤内が狼狽する。 あの場を収拾するために付いた嘘だが少しやりすぎだったのだろうか? 「だけど、なんで藤内は謝ってたんだ? 先輩は立花先輩に追われてるだけなのに」 「ああ、それは私も思った。なぜ藤内が泣く?」 三之助と孫兵の目が自然と藤内に向けられる。 「……お前ら、聞いてないのか? 先輩は水たまりにはまりそうになった女子を助けてずぶぬれになったんだ。そこへ漬け込んだのが立花先輩。……で、その先輩に制服を渡したのが私なんだ。だから、あのとき私が早く気づいて制服をちゃんとしたのを渡してれば……」 「……そうだったのかー。でも、お前は立花先輩に頼まれた制服を渡しただけなんだろう? 何も悪くないじゃないか」 そう言って、左門は藤内の頭を撫でる。 確かにあれは立花の策略かもしれない。 でも、それをフォローできなかった風紀委員にも責任はあるのだと藤内は自分を責めた。 「……なぁ、藤内。私の記憶に間違いがなければ、先輩は立花先輩以外を責めてなかったぞ?」 「え……?」 「確かに孫兵の言うとおりだな。あの人制服の事聞いたら『立花先輩の趣味』て言って苦笑してた」 作兵衛は先ほど廊下で話していた時の事を思い出す。 「もしも立花先輩の趣味なら、怒ったり、逆に吹っ切れて笑ったりしながら話すのが先輩の筈なんだ。でも、困ったような笑いだったから気になってたんだよ」 「……もしかしなくても、藤内に気を使ったんじゃないのかな? 藤内ならその事言うと困ると思って」 数馬は朗らかに笑って言うものだから、藤内はどうしてと首を傾げた。 「私が困る?」 「うん。だって、先輩はこの教室に入った時自分からは言わなかったでしょ? それに案の定藤内はその事聞いて落ち込んでたし。きっと先輩なりの優しさだったんだよ」 藤内の肩をぽんと叩いて数馬は笑う。 「それに、俺さ一年から先輩が逃げてるって聞いたんだけど、やっぱり一年の教室でも風紀の策略とは言ってたけど、立花先輩と綾部先輩以外は責めて無かったって話。やっぱり、お前の事気にかけてくれてたんだよ」 「……あの先輩、優しいよ」 「孫兵?」 「ジュンコ逃げた時も助けてくれた。そのあとも何かと声かけてくれるし。本人気付いて無いだけで優しい人だよ」 思い違いだとしても良い。 勘違いでも構わない。 でも、自分達はそう思った。 優しい先輩なんだなって。 「なら、今度皆でお礼しよう!!」 左門がいきなりいきり立つ。 「藤内にも、孫兵にも、数馬にも優しい人なら皆に優しい人だ。だからお礼しよう!!」 「良いね! 先輩なら食べ物好きだし、今度何か奢ってあげよう」 和気藹藹と人を喜ばせる事に花を咲かせる六人。しかし、その光景に不似合いな言葉が入りこむ。 「あ」 「どうした? 孫兵」 何か良い案が浮かんだか。と左門が彼の方を見る。 しかし、帰って来たのは聞きたくもない言葉だった。 「……ジュンコがいない!! 服の中に入ってたのに!!」 「何で服の中なんかに入れてたんだ!?」 珍しく左門が彼を問い詰める。ジュンコと言えば蛇。逃げ出したと聞いたら学園から女子を中心とした生徒がいなくなると言っても過言ではないほどの大事だ。 「だって、一人じゃ寂しいかと思って!! 先生達もいないから良いかなって!!」 「良くないだろ? 脱走したならまだしも」 「脱走してたの捕まえたんだよ!!」 じゃしょうがないか。 そう言ってそのまま放置しようとする三之助の首を作兵衛が案の定掴んだ。 「とりあえず探さないと大事だ。孫兵、行きそうな場所は?」 「ジュンコ、先輩気に行ってたから、多分先輩の服の中だと思うんだけど……」 「先輩追いかけなくちゃ!!」 「先輩! 本当に今日はごめんなさいぃぃぃ!!」 「ジュンコー!! 今行くぞー!!」 「いや、先輩の安全の方が大事だって。ってか、お前ら言ったそばから違う方向に行くなー!!」 「三之助、違うらしいぞ?」 「へ? こっちじゃなかったのか? てか、左門も間違えたじゃん」 に見送られた三年生は全力で彼女を追いかけて行った。 彼女が次に目を付けた避難場所へたどり着く前に。 すでに疲労困憊の。 彼女が休むべく目指した場所とは? 作者より 実は一番ネタが綺麗に纏まってくれた学年です。伊賀崎と次屋の身長が高いのは独断と偏見です(笑) 藤内も今回は壊れたため、作兵衛が一人突っ込みと言う可哀そうな事態に。主人公もかなり爆発しました。 三年は全員が仲良し。痛みも嬉しさも全員で分かち合う学年だと信じております。 2010.7 竹中歩 ←戻 進→ |