僕はあいつが嫌いだ。
ナルシストで
何でも出来て
お姉ちゃんに嫌味を言うあいつが。
でも、それ以上に認めてはいるんだ。





当然の結果+@





「全く、誰の方が素直じゃないんだが。」
「?!」
 やっぱりシュウは驚いてた。まぁ、当然だよね。僕がシュウの借りてる部屋の前で待ってたんだから。どうしても言いたいことがあって今日は此処まできたんだから。それくらい驚いてくれなくちゃ割に合わないよ。
「どうして君がここに?」
「ちょっとようがあってね。どこかで話せる?」
「…屋上に行こうか。カフェテラスもある。」
「うん。」
 再びエレベーターに乗った僕らは無言のまま目的のカフェテラスへと向かう。
 目的地についたシュウは店員さんに二人お願いできますか?とか何とか言って窓辺の席へと向かっていった。
「で?言いたいことって?」
「これ。」
 僕はそれを差し出した。赤くて長方形の箱。白いリボンがあしらわれたこの時期には欠かせないそれを。
「これは?」
「お姉ちゃんが僕にくれたバレンタインチョコ。」
「…?で?見せびらかしにきたとか?」
「そんな訳ないでしょ!」
 お姉ちゃんがどうしてシュウに突っかかるのかわかった気がする。こいつは人の神経を逆なでする喋り方をするからだ。
「その逆に等しいよ。」
「?」
「このチョコレートはね、元々お姉ちゃんがシュウに作ってたものなんだよ?」
「…え…」
 信じられなかったみたいで、少しシュウは凍った。そりゃそうだよね。自分はさっきクッキー貰ってたもん。なのにチョコレートが存在するなんておかしいと思ってるはず。
「これがどういう意味か分る?」
「…全く。」
「お姉ちゃんはワカナさんと最初チョコレートを作ってたんだって。でも途中それをクッキーに切り替えた。理由…分るんじゃない?」
「僕が…甘い物が苦手だから。」
 そう。お姉ちゃんはシュウが甘い物を苦手なの知っていて、それでクッキーにするようワカナさんにアドバイスしたって。クッキー作りを教えたタケシから聞いたんだ。
「それで行き場のなくなったチョコレートは僕になったんだよ。」
「理由はわかった。でもそれでどうして君が…」
「そのクッキーがどれだけありがたいか分って欲しかったんだよ。」
 僕は唯それを言いたかっただけなんだよ。お姉ちゃんがどれだけ苦労してそれを作ったか。どれだけシュウのことを思ってるか。意外に知らないでしょ?
「僕は弟だから…一生足掻いても本命はもらえない。でもシュウはそれをもらえるんだもん。そのありがたさとか、重みを分って欲しかった。それだけ。」
「本当にたったそれだけの為に?」
「それだけだよ。」
 本当はもっと行ってやりたい事があったよ。気障だとか、お姉ちゃんに嫌味を言うなとか。でも、それがシュウなんだと思うからいえないんだよ。その全部がシュウだから。それに…
「言いたいことを言って否定したところで、シュウを見下したりしたら、かなわない僕が惨めでしょ?」
 僕は笑って言ってやった。そう、僕は弟。だからそれ以上でもそれ以下でもない。一番近い存在で、一番遠い存在。どうしようも出来ないから、こうやってちょっとからかいにきたんだよ。
「…なるほどね…」
「だから、お姉ちゃんにもっと優しくしてよ?」
「…ああ。」
 僕はそう言うと、シュウの前から消えようとした。でもシュウはその瞬間僕の頭にポンと手を置いてこう言ったんだ。
「頑張るよ。君より近い存在になれるようにね。それまで…彼女を守って欲しい。僕のライバルさん。」
「……もちろん。」
 ちょっと子ども扱いされたのが気になったけど…シュウが僕をライバルにしてくれてるってわかったのが凄く嬉しかった。嫌味を言われた時、お姉ちゃんの気持ち分ったようなきがしたけど、それ以上に分った気がする。ライバルって認められるって嬉しいね…
 そして今度こそ僕はポケモンセンターへと戻る為に駆け出した。



「でも、生半可な物じゃ僕は越えられないよ?」
弟は何時でもそばにいるからね。










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おまけです。
マサトはこれだけお姉ちゃんを大切にしてるんだと言う物語。
本当はもっと罵声とか飛ばして喧嘩させても良かったんですが、
何気にマサトはシュウのこと認めてるんじゃないかと思います。
ハルカ以上のライバルなのでシュウには苦労して欲しいものです(笑)
2006.2 竹中歩