それは雲一つない晴れた日だった。
 ハイカラシティの駅の前、仁王立ちする目つきの悪いインクリングが制服姿の三人を見下ろしている。
 一見するとチンピラ…素行の悪そうな…ちょっとばかりやんちゃをしそうな…インクリングに絡まれている様に見えるが、ハイカラシティでは良く見かける光景の為、広場にいる他のインクリングは全く気にしていない。
 今日は何が起こるのだと興味本位で見ているインクリングがいる程度だ。
「はい! 復唱!」
 広場に響き渡る様な大きな声で、ピンクのベリーショートヘアーの目つきの悪いインクリングが叫ぶ。
 それに、駅を背にした制服のインクリング、左からブルーのスルメショートボブ、ピンクのアシメ、イエローのまとめ髪の三人が口を大きく開いて。
「追わない、買わない、まず逃げる!」
 そう叫んだ。
「良し、ならブキは!」
「「鈍器!」」
「サムライ! あぶり! そうじゃないだろ!! ポニ坊!」
「ブキは友達! 大事にしよう!」
「ポニ坊はちゃんと覚えてるな。良いか、ブキは友達だ。まかり間違っても鈍器じゃない。良いか、相手をインクで倒すものだ」
 真っ当な事を口にして目つきの悪いインクリングは大きく溜息を吐くと、すっとしゃがんで不穏な言葉を口にしたインクリング二人と、良い子の返事をしたインクリングに視線を合わせる。
「殴るなら正面からインクで殴れ。物理はダメだ。バトルをしてインクでならどれだけ殴っても良い。それ以外は」
「拳で殴る」
「あぶり、拳は作るな。握手をしろ。良いな? 握手が出来ない相手なら」
「プライドをへし折る」
「サムライ、それはバトルだけにしろ。撒くか逃げるかどっちかの戦力的撤退をしろ。それでも駄目なら」
「あぶりちゃんとサムライちゃんを止める」
「ポニ坊、無理はするな。バトルを吹っかけろ。良いか。戦って良いのはバトルだけだ。それ以外は絶対に駄目だ。この約束が守れなかったらバンカラ街には行かせられない」
 そう言って、どこをどう取っても真っ当過ぎるガタイが良すぎな上に目つきの悪いインクリングは、三人の頭をぽんぽんと叩いた。
 それに三人はこくんと頷くと、小指を出す。その小指に目つきの悪いインクリングは一人ずつ指切りげんまんをすると立ち上がった。
「5時までには帰って来い。時間が守れなかったら次は無いからな?」
「はい!」
「お前ら……返事だけは良いんだけどな。じゃあ最後の確認だ。財布は?」
「持った!」
「イカフォンは?」
「持ったよ!」
「ティッシュとハンカチは?」
「持ちました!」
「良し、行ってこい!」
 その言葉を待ってましたと言わんばかりに三人は手を振りながら、駅に向かう階段を三段飛ばしで、訂正、イエローのまとめ髪のインクリングだけは一段ずつ上って行った。
 その背中を見守っていた目つきの悪いインクリングは大きな大きな溜息を吐くと、がしがしと頭を掻く。
 不安しかない。不安だけしかない。何の希望も見いだせない。
 本来なら自分が付いて行くのが良いのだろうが、生憎と自分の顔はバンカラ街に乗り込むには向いていない。
 顔面凶器と言わんばかりの強面である事を重々承知している。トラブルに巻き込まれるのが目に見えていて行く訳が無い。
 それでも三人で行かせるよりはマシかと後悔していると、ポンと肩を叩かれた。
「オレ達は出来るだけの事だけはしたんだ」
「………した」
 右の肩をパープルの髪をドレッドにした、顔面偏差値の高いインクリングが叩き、左の肩をグリーンの髪をツーブロックにした、言葉少なの筋肉質なインクリングが叩く。
「サムライには視線を合わせない様にサングラスを渡したし、あぶりには喧嘩を売られても聞こえない様にヘッドホンをも用意した。ポニ坊には顔を隠すサンバイザーを渡したし、出来得る限りの事はしたつもりだけど」
「……クツは、全部、ヒト速ガン積みにしたから」
「それにサムライとあぶりの制服だってオレ達のお古だろう? 最高まで育て切った自慢のフクじゃないか」
「アイツらを守る為に出来得る限りの事はしたってのは間違いない。だけどな、相手を守る為の対策は何も出来ていないだろ……」
「…………」
「…………」
「確か、バンカラではポニ坊のボールドはウルトラハンコだから良いとして、サムライはノーチラスだぞ。あぶりだってスペシャルがエナジースタンドだ。物理的に強すぎる」
「……ソウダネ」
「……そうだな……」
「菓子折り、何箱いると思うか?」
「相手チームが4人として、……20個?」
「予約がいる、か……」
 ピーっと甲高い音がして、電車がガタゴトと動き出す。
 それを三人のインクリングは遠い目で見送りながら、心の中で誰とも分からないバンカラ街のインクリングに力の限り謝罪した。




 そんな心配性な、否、未来を予言した三人のインクリングの思いなど知らず、お揃いの制服を着た三人はバンカラ街の駅から広場に出ると、広場をきょろきょろと見回した。
「すごい、ハイカラ地方とは全く違う!」
 バンカラ街に初めてやって来たイエローのまとめ髪のインクリング――ポニ坊は目をきらきらさせて辺りを見る。
 前にサンカクスのドリンクとフードがどうしても食べたくて、保護者に無断でバンカラ街に来たピンクのアシメのインクリング――サムライと、ブルーのスルメショートボブのインクリング――あぶりの二人は「ソウダネ」と冷や汗をかきながら相槌を打った。
 あの時は謎のエモートという格好のセレクトを間違った記憶が強く、サンカクスのフードやドリンクの味など覚えていない。
 今日の目的は噂に聞くバイガイ亭のラーメンだが、二人は時間があればサンカクスで何か買いたいと思いつつも、兎も角今日はラーメンだとバイガイ亭に足を運んだのだけれど。
「……足りない」
「足りないよね」
「足りないね……」
 バイガイ亭のメニューを見ながら自分の財布のゲソコインを見て、三人は目を合わせる。
 どうしても食べたい全部乗せを食べるには、あとちょっとだけゲソコインが足りない。ポケットのどこかに入っていないかと、その場で三人一緒に縦にジャンプしてみたけれど音は何もしない。
「何回勝てば食べられると思う?」
「あぶりちゃんもサムライちゃんもたくさん食べたいよね?」
「うん」
「じゃあ一回勝てば何とかなるんじゃないかな」
 自分の財布の中身とバトルでもらえる報酬を考えながらポニ坊は指折り数えて、うん、と頷いた。
 ゲソコインが足りないのであればバトルで勝てばいい。クマサン商会でバイトをしても良いけれど、ほんのちょっとだけゲソコインが欲しいのであればバトルに限る。
 それに、運が良い事に今の時間のナワバリバトルはバイガイ亭だ。一回勝てば憧れの全部乗せが食べられる。それにもう少し頑張ればデザートも食べられるかもしれない。
 食べたい。何が何でも食べたい。
 三人は頷きあい、立ち上がって「勝つぞー!」と叫んで拳を天に突き上げた。
 そんなこんなで参加したナワバリバトル。
 一緒のチームになったのは、黄色のTシャツが眩しい初心者わかば君だった。
 黄色のTシャツが一緒のチームだったら死ぬ気で勝て。
 それはハイカラシティのインクリングであるならば、誰でも知っている言葉。
 最初はハイカラ三人衆と呼ばれた集団のモットーだったらしいが、今ではハイカラシティのインクリングのモットーともなっていた。
 尚、ハイカラ三人衆は代々続いており、今もハイカラ三人衆は存在している。
 そんなモットーを胸に戦いを始めたのだけれど。
 ぷちん、とゲソ辺りが切れた音がした。
 その音を聞いたのはポニ坊で、はわわわとばかりに顔を青くさせながらチームメイトの顔を見る。
 いつもニコニコ元気印の三人組だが、理不尽、特に弱いものいじめを許さない。初心者狩りなどもっての他だ。
 手加減をしろとは言わない。塗りをおろそかにして初心者を狙うなんて極悪非道な真似は絶対に許してはならない。
 ハイカラシティで初心者のインクリングばかりを狙おうものなら、次の日にイカスツリーからぶらりんしゃんとばかりに吊るされる。安全に考慮して吊るされるだけだが、精神的ダメージは大きい。
 そんな場所で育っているのだ。極悪非道のインクリングを許せる訳が無い。ハイカラシティのインクリングとして許すわけには行かない。
「あ、あぶりちゃん! サムライちゃん! 僕とこの子が後ろを塗るから!! だから普通に戦って!!」
 何度もリスポーンして来る黄色のTシャツのインクリングを抱き締めてぷるぷる震えるポニ坊は、相手チームを怖がっている訳ではない。
 無言でエナジースタンドを肩に担いだあぶりと、ノーチラスをぶんぶんと振り回し始めたサムライに怯えているのだ。
 逃げたい。戦略的撤退を選びたい。だがしかしポニ坊には守らねばならない黄色のTシャツのインクリングがいる。
 びええええと泣きながらでも、二人を真っ当な戦いに導かねばならぬのだ。
「黄色いTシャツがいる時は死ぬ気で勝たなきゃならないけど、バトルは楽しいって教えなきゃならないんだよ!」
 ポニ坊の必死な叫びに二人は、はた、と思い出しポニ坊と黄色のTシャツのインクリングを見る。
「そうだった! 相手をエナスタでフルボッコにしたらバトルが出来なくなる!」
「ごめんねポニ坊! ノーチラスじゃなくて拳で殴るぐらいにするから!」
 伝わったけど伝わっていないのであろうポニ坊の思いを受け取って、二人はもうそれはそれは楽しそうに笑った。
 ポニ坊が出来るのはここまでだ。後は相手チームが悪い。
 ポニ坊は心の中で南無南無と唱えながら、黄色のTシャツのインクリングに持っていたボールドマーカーを見せると。
「大丈夫! ウルトラハンコは物理で殴らないから! 相手を合法的に潰すだけだから!」
 と、何の救いにもならない言葉を発して、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で笑った。
 それに黄色の(以下略)は首を傾げながら頷くと、わかばシューターを構える。
 それを確認して、一番乗りじゃー! と言わんばかりのあぶりが渾身の力を込めて自分達、リスポーン地点の下でウェーイしているインクリングにキューバンボムをぶん投げた。
 物理攻撃とサブ攻撃の二段重ねだ。
 そうしてエナジースタンドからドリンクを取って一気飲みすると、飛び降りて拳、否、N-ZAP85、通称黒ザップで相手を叩きのめしに行く。
 それを後ろから逃がさねえぜ? とばかりにポイントセンサーをぶん投げてサムライが援護すると、ポニ坊と黄色(以下略)を見て「後は頼んだから! ポニ坊!」、そう言って黄色(以下略)の顔を覗き込みにっこりと笑うと。
「絶対勝たせてあげるからね! 大丈夫! 相手は血まみれにしないから!」
 ぽんぽんと頭を叩いてからあぶりを追って飛び出した。
 尚、この時点でエナスタブーストをかけたあぶりはWIPEOUTを取り、自分の周りを塗り広げながら真ん中まで突き進んでいる。
「あぶりちゃん! 待っててね!」
 そう叫ぶサムライは溜まっていたスペシャル、アメフラシを持ち、そのまま遠投とばかりに相手陣地に投げ込んだ。
 尚、ここは自陣である。
 そんな二人を見て、ポニ坊はすみっこの方から塗り始めると黄(以下略)に、これ以上ないくらいの良い子の笑顔を見せると「頑張って塗ろうね!」と、そこに親の仇でもいたのか? と聞きたくなるレベルで一切の妥協を許さずインクを塗り広げていった。
 それに黄色のTシャツのインクリング(名前を聞いていない)もうん、と頷いてわかばシューターで自陣を塗り始める。
 その結果
 それはもう見事に塗り返したバイガイ亭のステージで拳を天に突き上げるあぶりとサムライが、拍手喝采を浴びる事となった。
 余談ではあるが、敢闘賞はびえええと泣きながら、ぶん投げたウルトラハンコで相手4人を一度に倒したポニ坊である。
 そんなこんなでエモートを、初心者マークの可愛いインクリングはわかばシュータを持って嬉しそうに飛び跳ね、その隣で同じく「良かった! 良かった! 誰も怪我しなかった!」と明後日の方向に喜びながらポニ坊が同じ様に飛び跳ね、あぶりは投げキッスを、サムライはウインクをしながら二本指で前を刺すというエモートを披露する。
 その瞬間、黄色い悲鳴がバイガイ亭に響き渡った。これが後に語られる「王子爆誕の瞬間」である。後世まで語られるその瞬間はバイガイ亭の歴史に刻まれ、ミスター王子様という謎イベントに繋がる事を四人は知らない。
 そんなこんなでゲソコインを稼いだ三人はバイガイ亭の全部乗せを注文する事が出来たのだけれど、それとは別にたっぷりの餃子と杏仁豆腐まで美味しく頂く事になった。
「本当にありがとうございました」
 あぶりとサムライの前の席、ポニ坊の横でごくごく普通のラーメンを食べた黄色のTシャツのインクリング――ライトパープルのマッシュヘアのボーイ、マッシュがぺこりと頭を下げた。
「お礼を言われるような事してないから。ね、サムライちゃん」
「うん! それに餃子券と杏仁豆腐券もらったし!」
 ラーメンの他にテーブルの上に置かれていた餃子と杏仁豆腐は、マッシュが持っていた無料引換券で頼んだものだ。
 マッシュ曰く「くじ運が良い」らしく、以前にバイガイ亭のガラポン抽選会でもらったものだと言って三人に譲ってくれて。
 そのお陰で、ラーメン、餃子、杏仁豆腐という満足セットを堪能する事が出来、お礼というならばそれで十分だった。
「いえ、皆さんのお陰で次のブキが買える様になったので。これくらいの事はさせて下さい」
 どうやらマッシュは初心者オブ初心者だったらしい。
 次のブキはスプラシューターかスプラローラーか。そう笑って言っているマッシュを見て、三人はにこにこと目の前のラーメンを啜っている。
 ごくごく普通の全部乗せを食べているポニ坊と、1・5倍の全部乗せを食べているあぶり、そうしてギガ盛りの全部乗せを食べているサムライというツッコミどころ満載のメニューを見ないフリをして自分のラーメンを啜っているマッシュは、出来たインクリングに違いない。
 そんなこんなで他愛も無い話をしながら和気あいあいとしてラーメンをすすっていると。
「マッシュ!」
 ずどどどどど! と砂塵を立てるか様な勢いで、制服姿のインクリングが四人の席のある場所に、スライディング一歩手前の状態で滑り込んで来た。
 肩で息をしている制服姿のインクリングはライトパープルのぱっつん前髪の美少女だ。アイドルやモデルと言われても納得がいくくらいの可愛さで、肩で息をしている姿さえ可愛い。
 けれど。
「大丈夫なの! マッシュ! アンタが初心者狩りにあったって聞いたんだけど!」
 どこからどう見ても美少女なインクリングが野太い声を発した。
「うん、大丈夫。この人たちが助けてくれたんだ」
「そうなの? アンタ達……バンカラじゃ見ない顔ね?」
「ハイカラから来ました!」
「バイガイ亭のラーメンが美味しいって聞いて!」
「それでお金が足りなくてバトルしたんです!」
 その瞬間、バイガイ亭はクラゲくんがラーメンを啜る音だけが支配した。
 それもそうだろう。
 野太い声の美少女が戸惑うレベルで、どう見てもさわやか系王子様とキラキラ王子様が可愛らしい声を発したのだから。
「え、……アンタ達、全員ガール……?」
「ガールはあぶりちゃんとサムライちゃんで、僕はボーイです!」
 野太い声の美少女の困惑に良い子の返事をしたのはポニ坊で。
「……ぼくのお兄ちゃんです……ごめんなさい……」
 何故か明後日の方向を見て謝罪をしながら、マッシュがそう言った。
「何で謝るのよ!」
「だって……」
「だってもクソもないでしょ!」
 二人は間違いなく兄弟だろう。野太い声で喋らなければ美少女に見える兄と、将来が楽しみな顔面偏差値高めの弟だ。
 よくよく見れば顔が似ている。
「サムライさん達、驚いてるから…」
「あらやだ」 
 そんな二人の会話をくるりとした目で見ていた三人に気付いた美少女モドキはぱっと髪を払って。
「ホントに弟を助けてくれてありがとう。アタシはぱっつん。バンカラ街のインクリングよ」
 そう自己紹介をした。
「わたしはあぶりです!」
「私はサムライです!」
「僕はポニ坊です!」
 それに続いて良い子の、お揃いのカーディガンにネクタイの制服の三人も自己紹介をする。
 声と姿が違い過ぎて脳がバグる状態だが、お互いに通常運転なので仕方が無い。
「ともかく、アタシは今からバトルの約束があるから行かなきゃならないんだけど。マッシュ、三人を駅まで送って行きなさい。後で合流するから」
「うん、分かった」
「ここから裏道通った方が駅に近いから、マッシュに付いて行くと良いわ。それと、今度、ハイカラシティにお礼に行きたいから、マッシュとフレンドコードを交換してくれる?」
「分かりました!」
 ポニ坊がはい! と手を挙げて返事をするのを見て、美少女は大股で、スカートの裾をひらりと翻し、否、捲りあがったとしてもボーイだから問題ないわよね☆くらいの勢いで風の様に走り去っていった。
「……(とっても足が速くて)すごいね」
 ポニ坊が感心した声で、本当にただただすごいなあと感心した声で言う。
 それに。
「……(キャラが濃すぎて)すごいんです……ごめんなさい」
 と見当違いな事を言いながら、マッシュは兄だと言う美少女(に見える声が野太いボーイ)の背中を見送った。




「ハイカラシティの制服ボーイ……?」
 全速力で走り、タラポートで待っていた仲間と合流した後、ぱっつんはぼそりとそう零す。
「ぱっつん? どうしたんだ?」
「とりあえずゲソが邪魔だから退いて」
 ぱっつんが零した言葉が気になったらい近寄って来た仲間をしっしと追い払いながら、ぱっつんは最近ガール達の間で噂になっている話を思い出した。
 曰く、制服姿の王子様に助けてもらった。
 曰く、危ない時にエナスタを分けてくれて、頭を撫でてもらった。
 曰く、ピンチの時にノーチラスで助けてくれて、ウインクの後に頭を撫でてもらった。
 曰く、ヘッドホンが似合うスルメショートボブの投げキッスが格好良くて、サングラスのアシメのウインクで撃ち抜かれた。
 曰く、ブルーの髪の主人公タイプの王子様派と、ピンクの髪のキラキラタイプの王子様派に二分しているらしい。
 曰く、曰く、曰く。
「あれ、あの子達じゃないかしら……?」
 今日出会ったバグの様なガール、自分の事を棚の上にぶん投げながら可愛らしい声できゃっきゃと話していた二人を空の真ん中あたりを見ながら思い出すと、ゲソが邪魔だと言うのに近付いて来るインクリングに拳を入れながら溜息を吐いた。