外が真っ白な銀世界に包まれる頃…… その特別会議は開かれる。 フリーリアンとアリエッタのクリスマス 「……という訳で、今年も例年通り話し合うわけなんだけど」 会議のメンバーは四人。 上座と呼ばれる一番偉い人間が座る所にはオリジナルイオンである『オリジナル』が鎮座し、他の三人はテーブルを囲むように等間隔で座っている。 オリジナル以外の参加者はレプリカイオンとアニスとシンク。 この四人は毎年ある事を話し合うため、少しの間だけ顔をあわせる。 その内容とは、 「今年のクリスマス、アリエッタとフローリアンのところに誰が行く?」 オリジナルは真顔で三人に問いかける。 その三人も一応本気で悩んでいるようだ。 「去年は確かイオン様でしたよね?」 「ええ。僕がこっそりと二人のところにプレゼントを置きに行きました」 四人はサンタクロースを信じているフローリアンとアリエッタのために昨年からサンタクロースを演じるようになった。 そして今話し合っているのは、昨年レプリカイオンがやったサンタクロースを誰がするかということ。 「アニスでいいんじゃないの? レプリカは去年こけたから、ばれそうになったし。オリジナルもアリエッタの寝顔とか見ててばれる可能性もあるしね」 「なら、そういうシンクが行ったら? 窓から入ったりするの得意でしょう?」 「冗談。年末のこのくそ忙しい時にそんなことする時間ないっての」 やはりこの話の流れから行くとアニスが妥当と思える。 もし見つかったとしても、彼女のアドリブや演技力なら怪しまれることはないだろう。 「じゃ、今年はアニスに頼むよ。プレゼントは……アリエッタの分は僕はわかるけど、フローリアンの分は?」 「あ、それは私がわかります。なので、それの用意だけお願いします」 「了解。たく、アリエッタならわかるけど、フローリアンまでまだ信じてるとは思わなかったよ。僕のレプリカの癖に、何であそこまで子供っぽいんだか」 「フローリアンはアリエッタに教わった事をそのまま信じているようです。あの二人は純粋ですからね」 イオンは穏やかに笑って席を立つ。 「それじゃ、僕は仕事に戻るよ。六神将の仕事もあるし」 「私も仕事に戻りますね。イオン様、行きましょう」 「ええ。では、導師、また後ほど」 「お疲れ様」 こうやって一年に一度の会議は静かに幕を閉じた。 かのように思えたのだが…… 「大変です! オリジナル様!」 会議が終わってから三時間後。 アニスがオリジナルの部屋へと飛び込んできた。 「何事だよ? 今プレゼントの手配で忙しい……」 「そのプレゼント、フローリアンとアリエッタが変更したんですよ!」 「え?!」 思わぬ事態に、珍しくオリジナルは顔色を変える。 「な、なんにするって言ってたんだ? 今からなら何とか間に合う!」 「それが、手紙を出したらしいんです。サンタクロースに出すんだって」 「手紙ぃ?! で、内容は?」 「確認する前に、ポストに投函した模様です……」 サーと二人の顔から血の気がうせる。 せっかく用意したプレゼントが台無しになる。なんて事に驚いているのではない。 内容がわからないということに驚いているのだ。 「回収は? 間に合ったんだろう?」 「……ほんの数分の差で、間に合いませんでした……」 絶望的だ。唯一の手がかりがどこにあるかわからない。 ならば、 「二人にどこに送ったか聞き出して、回収するしか……」 「そうしようと思ったんですけど……」 がっくりとうな垂れるアニス。そして扉の向こうを指差した。 「サンタクロースさんに手紙届くと良いね、アリエッタ」 「はい。楽しみです!」 扉から入ってきたのは上機嫌なフローリアンとアリエッタ。まさに話の中心的人物。 「あのさ、二人とも……手紙はどこのサンタさんに出したの?」 アニスに聞くより早いと思ったオリジナルは、本人達に聞いてみる。 すると二人は顔を見合わせて、 「秘密だよ!」 「秘密、ですー」 ニコニコと笑って、再び走り去っていった。その姿はまるで五歳児。浮かれきっている。 「……とまぁ、このような状態でして……どこに送ったかも教えてくれないんですよ」 「最悪じゃん……」 その後、その事態はレプリカイオンとシンクにも伝達され、後に四人で頭を抱える大きな出来事となった。 月日は流れ、クリスマスイブの夜。 「結局、当初のプレゼントになってしまいましたね」 「しょうがないよ。全然思い浮かばなかったんだから」 「という訳で、アニス。アリエッタとフローリアンの分、頼んだよ」 アニスはオリジナルから大きなリボンのついた袋を二つ受け取る。 「了解です。もうあとはどうにかフォローしましょう」 日付が変わったのと同時に、その任務は静かに遂行される。 そして次の日の朝。 「アニスー!」 朝の六時。アニスはフローリアンの声でたたき起こされる。 「ん……何事?」 眠気眼の目をこすって体勢を起こすアニス。 「ほら、はやく起きて!」 「え? 何?」 アニスの手を掴み、フローリアンは行きなり走り出す。 一体どこに向かっているのだろうか? そして、連れて行かれたのはレプリカイオンの執務室の中。 「何事?」 「ねぇ、見てみて! 凄いよ!」 まだ何が起きたのか理解できず、頭がボーっとするアニスだったが、部屋に着いた途端、その状況を把握する。 「これ……何?」 「何って言われてもね……」 「あ、シンクもいたの?」 「僕だけじゃなくて、この部屋の住人もオリジナルもアリエッタもいるよ」 確かに例の六人全員が集まっていた。 でも、この状況ならそれも理解できる。 「なんでイオン様の部屋に名前の付いた箱が六つもあるの?」 「さぁ……起きたらコレが机の上にあったんです。メリークリスマスと書かれたカードと一緒に」 それはプレゼントと思しきリボンの付いた箱。 サイズは全て一緒だが、リボンの色は六つ全て違う。 日付から言って、これは名前を書かれている人間達へのプレゼントだろう。 「誰がこんなことしたんだが……」 「え? オリジナル様じゃないんですか?」 「僕はこんな手の込んだ事をしないよ。ヴァンかな?」 「ヴァンなら一昨日からキムラスカの方へ行ってるから違うよ」 「シンクが言うなら間違いないでしょうね。でも、コレでは本当にサンタの仕業みたいですね」 微笑んでイオンはそういうが、それは流石にありえない。 でも、ならば一体誰が? 悩む四人。しかし、アリエッタとフローリアンはとても嬉しそうだった。 そして、その二人はある言葉を叫ぶ。 「アリエッタ、やったね! サンタさんに手紙が届いたんだよ!」 「アリエッタとフローリアンのお願い、聞いてもらえました!」 二人はピョンピョンとはねて手を取り喜ぶ。 だが、その光景を四人は理解できなかった。 「フローリアン、アリエッタ。手紙で何をお願いしたのですか?」 イオンは二人に聞いてみた。 「あのね、プレゼントを貰うのは何時も僕とアリエッタだけだから、二人で皆の文も一緒にくださいってお願いしたの!」 「皆いつも良い子です。だから、それを教えるために、お手紙を出したんです」 「やっぱりサンタさんは凄いや!」 「凄いです!」 再び喜びのあまり踊り狂う二人。 「えー……ありえないですよ。そんなの。てか、誰に手紙出したんでしょう? あの二人」 「聞いても教えてくれなさそうだしね……。まぁ、今は喜んどいた方がいいんじゃないの? アリエッタも嬉しそうだし」 「アリエッタが良ければそれでいいのかよ。このオリジナルは」 「まぁまぁ、シンク。ここは穏便に、ね?」 その年のクリスマス。 フローリアンとアリエッタのところには二人のサンタクロースがやってきた。 だけど、オリジナルとアニスとイオンとシンクのところにもやってきた。 ねぇ、サンタクロースは一体誰なの? 「今頃喜んでるといいんだが……」 「陛下も粋な事をなさるんですね」 「まぁな。ここまで純粋にお願いされちゃしょうがないだろう?」 そういう男性の手には一つの封筒が握られていた。 「差出人の名前しかなかったが、それを出した子供は知らなかったんだろう。封をしたこの蝋燭に押されている印が導師しか使えないものだという事を」 「その印を見た者が重要な書類だと思って、ここまで持ってこなければ、きっとあの子達はサンタを信じていなかったでしょうね」 「そうだな。ほとんど奇跡だ。サンタは寒い地方だと思ってグランコクマとしか書いていなかったのに」 二人は封筒を見て笑う。 「コレのために軍を動かしたんだ。あとでジェイドに怒られるぞ? ガイ」 「それはピオニー陛下も一緒でしょう?」 「おやおや、わかっていただいているのなら好都合ですね。じっくりとそれについて話させていただきましょう」 「げ、ジェイド!」 六人に所にやってきたサンタクロースは一体誰だったのでしょうか? 素敵な事を起こしてくれるサンタさん。 どこにすんでいるか分からないし、顔も見たことないけれど、 今年は特にありがとう! メリークリスマス! ------------------------------------------------------------END--- ノリと勢いだけで出来てしまったクリスマス。 そんで持って、捏造もいいところ。 でも、私はこの捏造が好きなんです。 みんなでギャイギャイ言ってるこの構図が。 他のサイトあまりみないので、 自分で書いてしまいました。 すいません、でもこの捏造は今後も使って行きたいと思います。 とりあえず、この捏造をみなさまに。 メリークリスマス! 2007.12. 竹中歩 |