赤面 「銀色の風…どうしたらあんなに綺麗に出来るんだろう?」 アゲハントを頭に載せた状態でハルカは物思いにふける。 ことの始まりはアゲハントとのイメージトレーニング。糸をはくや風起こし等々…どの技がいかに綺麗か研究していたときにふと銀色の風であること思い出した。それはシュウのアメモースも銀色の風が使えたこと。 一度見ただけでも焼き付くその技の華麗さ・綺麗さ…どうやったら、あんな感じに技が出てコンビネーションがよくなるのだろうと…。そこから悩んで約20分。 「あいたた…アゲハント頭に乗せてたの忘れてた…肩こったかも…」 首を二、三度回して軽くストレッチをする。 「こうなったら、考えるより行動…か!」 頭で悩むより見たほうが早い…思ったら即行動だ! 「それで…一度見せてほしいって?」 「やっぱり駄目かな…」 いつもなら肝心なときにいないシュウ。しかし、今回は肝心なときにいる。 偶然に再会できたことを今回はいつも以上に感謝したいと思った。 「普通…ライバルには何があっても頼らないと思うんだけど…」 「そんなの関係ないわよ!シュウとはライバルだけど友達でもあるもん。」 「友達ね…。」 「前にいってたじゃない。私が後ろからこっそり見てたときもうちょっと近くで見ればいいのにって。だからこうやって真正面からぶつかってきたの。」 そんな風に言った覚えはあるが…使いどころが違うのは気のせいだろうか? 「…見せてもいいけど…僕に利点はあるかのかい?」 「利点?」 「そう…君は例え友人であってもコーディネーターには変わりない。と言うことは少なからず、敵だ。そんな人に手の内を明かす。だとしたらかなりの交換条件が必要だと思わないかい?」 敵というのは言い過ぎかもしれないが、バトルなどでぶつかる事があるのは確か。 シュウの言うとおり手の内を明かすのはバトルでは命取りになりかねない。 「そうね…もし見せてくれるなら…私に何が出来る?」 「それは自分で考えるものだよ。」 「だって、私じゃシュウの利点になるようなもん持ってないんだもん。」 「確かに…その通りだね。」 「う……。否定しないところがむかつくかも…。解かった。一定の範囲なら私のできること一つしてあげるわ。」 「一定の範囲?」 「ジュース奢るとか…お使いとか…そんな可愛い範囲なら。」 「そう言う事ね。」 今の子供はシビアだと思う瞬間だ。前もって言うのはかなり高レベルな会話である。 「どう?」 「…しょうがないね。断ったところでどうやってでも見たいんだろう?」 「流石!話がわかる!」 交渉成立…と言ったところか。 「アメモース!銀色の風!」 シュウが空に向かって手をあげたのと同時にアメモースの羽から銀色の風が生み出される。昼間でもわかるほどきらきらと輝くその技はやはり目を奪われた……。 「すごい…やっぱりシュウだけはあるわね。」 「お褒めに預かり光栄だね。」 「どうやったらあんなに綺麗にアゲハントに出させてあげられるのかな…」 「…君も進歩してるんだね。驚いた。」 「え?」 近くにあった石に座り膝を台にして頬杖をついていたハルカは顔を上げる 「『何故ポケモンの技が上手く出ないのか』じゃなくて『ポケモンがどうやったら技を出しやすい状況になるのか』状況を作ろうと言う心がけが生まれたことに進歩を感じたんだよ。」 「だって…それをやるのがコーディネーターの勤めでしょ?」 「そう…コーディネーターはポケモンと意気投合するのも大事だけど、ポケモンに良い環境を作るのも大事。この辺りにも面白さが隠れてると思う。」 シュウの台詞が終わったあとハルカはパチパチと拍手をする 「拍手するほどのことなのかい?」 「なんて言うか体が勝手に動いたのよ。でも、私はシュウのことすごいなぁって思う。口は悪いけどポケモンのことちゃんと考えてるし、こうやって教えてくれるもん。さっきの技も本当に綺麗だった。」 「本当の美しさの前では…」 「どんな褒め言葉も陳腐に聞こえる…でしょ?でも、褒めるだけの価値はあると思うし、憧れもあるのよ…それに…やっぱり優しいなって。…?シュウ…?」 いつもは反抗ばかりして…気が強いハルカ。しかし思わぬ褒め言葉に気が動転したシュウ。 そして…その動転と嬉しさが表情に出るまで時間は要さなかった。 「どうしたの?」 「いや……」 あれ…? もしかして… ……照れてる?… 「シュウ?」 「何でもない…から…」 必死で手で覆い隠してもこういうことにはだけは鋭いハルカ。もう限界だ… 「嘘だ照れてる!顔赤いもん!」 「そういうわけじゃ…」 「あはは!可愛いかも!本当に純粋に褒められるとこうなるのね。発見、発見。」 こうなってはハルカの思う壺。遊ばれている。 ハルカに内面を褒められたことでどうしていいかわからない混乱状況が年齢相応の行動を出させたのだろう。それは今までシュウが表面上のものにしか褒め言葉をもらえなかったと言う意味も同時に指すが。 「あは、ごめんごめん!ちょっと面白くて。」 「君ね…やることが汚いよ…」 なんとかしていつもの冷静さを取り戻すシュウ。この間3分…なんとも早い切り替え。 「でも、安心した。」 ハルカも何とかして笑うのを止めた。しかし、目には涙がたまっている。まだまだ油断できない状態であることは確か。 「何が?」 「だって、シュウって時々子どもらしくないときがあるもん。私と年代変わらないのに。なんかいつも冷静さ保ってて、気が付いたらすごい厳しい表情になってて、だけどこうやって赤面するだんなって…。やっぱりシュウも同じ子どもなんだってホッとしたの。」 ハルカの笑顔は本当に嬉しそうで…蒲公英の様な明るさを秘めていた…。 「あまり言われないからね…本音で優しいとは…。社交辞令の優しさを本当の優しさととられるときもあるから…。慣れてないんだよ。」 「大変ね…。」 「だけど…。」 シュウはハルカの顔へと手を伸ばして顔を近づける 「何々?!!」 間近で見るシュウの顔はやはり綺麗で…線が細い。 「君はこんなに簡単に顔が赤くなるから本当に単純で羨ましいよ。」 不意打ち…遊ばれたのならやり返せという状態。 「気障!!鳥肌が立つかも!!」 「だろうね…。そうだ…さっき言ってたよね?何か一つしてくれるって?」 「え?ああうん。出来る範囲ならね。」 「それじゃ…次のコンテストまでに銀色の風を綺麗に出せるようになっていること。」 「…それでいいの?」 「これでも大変なことじゃないのかい?それに教えたのに成果がなければ意味が無いし。」 「わかったわ…絶対文句のつけようの無い銀色の風にしてあげる!」 たとえ口が悪くても…結局シュウは優しい。 絶対に無理は言わないところとか。 アドバイスしてくれることとか。 だけど、優しい所を褒められてここまで赤くなるのって そんなシュウとはギャップがあって可愛いと思う。 「やっぱり君には言葉でいうより、行動で示した方がこうかあるみたいだね。」 今思ったこと…撤回できますか?…やっぱり嫌味な奴でした…。 ------------------------------------------------------------END--- 作者より… 赤面ネタがかけたよ…長かったよ… シュウを赤面させたかっただけです。 ハルカの赤面は多々見れたので。 でも、どうやったら赤面するんだろうと考えて 出た案がこれ。 『褒められると赤くなる』 綺麗とか言う褒め言葉じゃないんです。 キーワードは優しさ。これを褒められると 赤くなります。しかも純粋にね。シュウだから 褒めるじゃなくて本当に優しいと思ったから褒める。 出来そうで出来ないことです。 しかもハルカからですからねそのパワーはかなりのもの。 結局は2人とも赤面しましたが…。 不可抗力で倒してもよかったですが…、 そのあとの対処が大変ですので。赤面と涙には弱いです… 2005.4 竹中歩 |