…あなたはどんな時に眠りますか? 夜になり、就寝時間が迫った時、 徹夜した次の日睡魔に襲われた時。 何にしろ睡魔が迫った時に眠りに付くのではないでしょうか? だけど、眠りに一番大切なのは『安らぎ』 心が落ちつかなければ、人は眠れません。 だからある意味自分が寝られる場所は… 自分が安らげる場所かもしれません… モルダナ〜bee balm〜 その出来事はハルカの言葉から始まった… 「私がシュウの分まで頑張ってあげる!!」 座っていたポケモンセンターの待合室でハルカは大声をあげてその場に立つ。その言葉は誰でもないハルカの口から呼ばれた人物シュウ。そのハルカの大声に少々あきれている顔だ。 「もう少し場をわきまえてもらえないか?ハルカ君。…皆君に注目してるよ。」 「あ!わわわ!!」 シュウの言葉であたりを見渡すと旅の途中でポケモンセンターに寄った人や、ポケモンの健康診断に来た人々などがハルカの大声のせいでこちら一点に視線が集中している。 「あー、恥ずかしかった。」 「君以上に僕は恥ずかしかったよ。全く美しくないね。」 「悪かったわね。…だけど、さっき言ったことは本当よ。」 「僕の分まで頑張ってくれるってことかい?」 「そう。だって、シュウ今回のコンテスト出られないんでしょ?ロゼリア…酷い怪我だから。」 今回、ハルカがこの街に来た理由は一つ。ポケモンコンテストの為。案の定、コンテストのたびに顔をあわせているシュウも今回のコンテストに参加するべくこの『シダケタウン』にいたのだが、今回は参加できない。理由は『ファントム』という仮面をつけた男子とバトルした際にロゼリアがかなりに負傷に陥ったからだ。そのため、大事をとって今回のバトルは不参加となる。 「しょうがないさ…僕が未熟だったようだからね…。」 「でも…やっぱり悔しいのは確かよ…。」 再びイスに座ったハルカはまるで自分のことのように涙を流していた…。 「どうして、君が泣くんだ…」 「だって、私はシュウを倒すことを目標にしてるんだよ?確かに前回の大会では優勝してリボンをゲットしたけどシュウとは当たらなかった。それって、シュウに勝ったとはいえないの。それに、シュウは少なからずサトシに勝ってるんだよ?…強いのに、何で私が倒す前に負けちゃうのよ…」「それに関しては今回の僕も返す言葉ないよ…。」 そのロゼリアに対する懺悔の表情はハルカが今までに見たことのないような表情だった。 その表情にまた涙が生まれてくる。 「確かに、悔しさから生まれる涙は美しい…でもまだ、君が流す時じゃない。その涙は君がコンテストの時に流す涙だ。だから今は流さなくてもいい…。」 「うー……」 ハルカはシュウの言葉に反応して口を動かすのを辞める。 変わりに低いうなり声に似た、決意の声を必死にあげていた…。 「だから、そうじゃない!!もう一度改めていっておくけど、今回のバトルで君は使い慣れていないエネコで挑むわけだ。だからかなりの練習が必要だね。…一回休憩!」 「もー!…シュウって結構スパルタ…」 「僕の分まで頑張るんだろ?だったらそれなりの結果は残してほしいからこうやって、特訓してあげてるんじゃないか。」 ポケモンコンテスト当日の朝、この街にあるポケモン関連施設の外でハルカはシュウの特訓を受けていた。ハルカが頼み込んだわけでもなく、シュウが教えてあげるといったわけでもない。ただ話の成り行きからこういう結果に至った。 休憩と言う言葉の後にハルカはそばの木にたもとにおいてあったタオルとスポーツドリンクを手にとって座る。 「もう、動けないかも…て言うか眠い。」 「…軟弱だね。良くここまでそんな体力でこれたよ。やはりあの一行のサポートがいいのだろうね。」 軽くため息をついたシュウもハルカの横に座る。 「何その言い方は?シュウの言葉って結構きついんだからね?」 「きついと言うのは当たってるから悔しくてそういう気持ちになるんだよ。」 「もうちょっと、言葉を崩すか遠回りで言いなさいよ。」 「それが君にちゃんと伝わるわけがない。」 「一々皮肉を混ぜる…。」 スポーツドリンクの入ったペットボトルを小脇に置くとハルカは後ろに木にもたれかかる。 「うわー…朝日がキレ―!!…もうこんな時間だったんだ気づかなかった。」 「熱中すると本当に君は周りが見えないね……。」 「集中力が続くて言ってよ。」 ハルカの言うとおりあたりは夜明けを迎えていた。この練習をはじめたのはなんと朝の5時。ただいまの時間は8時少し前である。 「そろそろ練習開始しようか……?シュウ?……」 ハルカは返事の返ってこないシュウの目の前で手を振る。しかし、反応がない。…眠ってしまったようだ。 「別にどこで寝ようとシュウの勝手なんだけど…私の肩を支えにして寝るのは辞めてもらえないかな…て言っても、もう無駄よね。」 ハルカの左肩に丁度もたれる様にしてシュウは眠りについている。男子なら絶えられる状況だが女子にはきつい。そして、気のせいか徐々に徐々に下へ向かって倒れていく。 「え?!ちょっと、マジで?!」 ハルカが慌てるのも無理はない。徐々に徐々にと下がってきていたシュウの体勢が最終的にハルカの膝の上で寝ると言うお決まりのポーズ。 「(うわーん!!何でこうなるのよ!!マサトはいいんだけど、シュウにやられると凄い恥ずかしいかも!!)」 シュウを起こさないように頭の中で混乱するハルカ。少しして平常心に戻るとその状況をようやく把握する。 「(そっか…ジョーイさんが言ってたっけ…ロゼリアのことが心配であんまり寝てないって。その上、私の特訓までやってたら体力持たないよね…。だけど、結局、こんなに卑屈な奴でもパートナーは大切なのよね。ただ口が悪いだけなのよ。…でもこうしてシュウの顔まじかで見るなんて思わなかったな…こうして寝てるだけ だと結構格好いいのに…。)」 ハルカはシュウを気遣いながらシュウが少し前にバトルに集中するためにシュウが脱いだ上着をそっとかける。 「ありがとう…」 そして、ここから少ししてハルカの意識も途切れた…。 「(……!しまった!)」 声には出さず意識だけでシュウはその状況を判断した。意識が地中で途切れたことを察して自分が途中で寝たことを確信する。そして自分の状況も。 「(………)」 自分のやっていた体勢に思わず赤面する。そして言葉も出てこない。 「確実に…寝顔見られた…。」 体勢を起こすと自分の上に掛けられていた自分の上着を回収してハルカを起こさないようにその場から退く。ハルカはまだ寝ているようだ。この状況、さっきハルカがやっていたことに激しく擬似している。 「僕としたことが…こんな状況で寝るなんて……よっぽど疲れてたのか、安心してたのか、どちらにしろ…起こしたほうがいいみたいだ…。ハルカ君。」 シュウは軽くハルカの体を揺する。ハルカの眠りは浅かったらしくすぐに目を覚ました。 「やば!!私まで寝てた?!」 「そのようだね…。」 「疲れてるのかな?」 「もうこの辺にしよう。時間だ。」 「そうね…よーし、やるぞ!!」 「…それよりどうして僕を起こさなかったんだ?」 ちょっと分が悪そうにハルカに探りを入れる。 「疲れてるんだなって思って。このまま起こすのなんか気が引けたから…。ただちょっと足はしびれたけど。」 「やっぱり君は美しくないね。」 「もう聞きなれたわよ。その言葉。」 はいはいと言う感じでハルカはその言葉を聞き流す。 …コンテスト開始数時間前…… 「ハルカ君。」 「え?」 受付を済ませサトシたちと分かれて選手室へ向かうハルカにシュウは何かを投げた。 「赤い…花?」 「コンテスト最中の君に忘れないでほしい花言葉の花さ…」 「花言葉?…まぁ、よくわからないけど私、頑張るから!!」 「ロゼリア、彼女が君の分まで戦ってくれる。…おかしいね、僕らはライバルのはずなのに。今はこうして、アドバイスしたり、励ましあってる。…いや、ライバルだからかな…。今回頑張ってる彼女のためにも今度は応援でなく、会場で戦おう…約束だロゼリア…」 心に休息なくして人は成り立たない。 それは睡眠についても言えることだが 人生についてもいえること。 少年は少女にそれに気づいてほしかった。 口で言うのは苦手だから… せめて、此花で伝わってほしい… 花名≪モルダナ≫ 花言葉≪安らぎ≫ ------------------------------------------------------------END--- 作者より… シュウ再登場ということで私の小説では珍しく 本編に疎って書かせていただきました。 少々アレンジ加えてます。ハルカはキミマロ君のこと 敵意しまくりだし、シュウが優しいし… 実際はそれ所ではないと思われますが、 そこは竹中の頭の中ということでご配慮ください(笑) 今回書きたかったシーンはシュウの寝顔です。 かなり親しい人にしか見せないと思うのですが… 後は赤面ですかね?結構シュウが赤面するの好きです。 また、シュウ登場の際には書きたいと思う今日この頃です。 2004.1 竹中歩 |