それはいつも突然に訪れる…。 まるで、クチナシの花言葉のように…。 水のせせらぎにのって流れてきた…。 クチナシ〜cope iasmine〜 「ん?なんだ…あれは?」 お昼を過ぎた頃シュウは川のほとりで休憩をしていた。しかし、その休憩を邪魔するかのように『ある物』が川の上から何かが流れてきて、丁度自分のいる場所と反対側にある川の石でせき止められる。 「バンダナ…か?しかもこのデザイン…見覚えがある…。」 流れて来たのは赤い『バンダナ』。しかもそのデザインには見覚えがある。 「あのデザイン…そんなに多いのか…?」 水面で今にも流れそうなバンダナそれを見ると、そして一人の少女の姿が頭を過ぎった…。ハルカの事だ。 シュウにとって彼女大きな存在だった。 目が離させなくて… ドジで… 能天気で… 良い所がなさそうだけど… 喜びを与えてくれる『特別』な存在。 それがシュウにとっては『ハルカ』…らしい。 「まさかいるのか?川上に?」 そう思い川上を見ると数人の人影が凄い勢いで走ってくる。 「当たったようだね。」 「あ!!シュウ!!」 まるで急ブレーキがかかったかのようにその少女たちはシュウの前で止まった。 「ハルカ君…何を急いでるんだい?」 「ごめん!!今話してるとこじゃないの!!早くしないと…」 「早くしないと?」 「どこかに行っちゃうかも!!私のバンダナ!!」 やはり流れて止まっているバンダナはハルカの物らしい。その証拠に、ハルカの頭にはバンダナはついていない。 「お急ぎのところ悪いんだけど、もしかしてあれかい?」 シュウはバンダナの方向を指差した。 「あぁ!!私のバンダナ!!」 「よし!!ここは俺に…あぁ!!モンスターボール向こうにおいてきた!!ピカチュウじゃ、あそこまで行くのは少しきついし…うーん…。」 「何やってるんだよサトシー!!」 モンスターボールを置いた事にマサトから注意を受けるサトシ。他のメンバーもモンスターボールを置いてきたようだ。 「私がとりに行く!元々は私が悪いんだし。それにこの深さなら歩いていける!」 ハルカの言うように川の深さは精々膝下程度。川の流れもゆっくりとしている。確かにこの川なら渡れるだろう。そう思い立ったハルカは靴を脱ぎ始めたが… 「間に合わない!」 シュウが叫んだことに驚きハルカはバンダナの方へと目をやる。 そして、一緒に飛び込んだ映像は大きな水音を立てて川の中へと吸い込まれていくシュウだった。 「え?!ちょっと!?シュウ!?」 その事態に一番あっけにとられるハルカ。シュウは靴を脱ぐ事もせず、そのまま川に飛び込んだのだ。服の重さが分かる水音が水面を走る。 そしてシュウは危機一髪のところで流されそうなバンダナを回収し、ハルカの目の前へと戻ってきた。 「全く大事な物を流されるなんてドジだね。」 水分を多く吸った自分のズボンの裾を絞りながら、シュウは呆れ顔でハルカに話し掛けた。 「ごごご!!ごめんなさい!私のせいでズボンぬれちゃって!!乾かすから!!これ脱いで!!」 ハルカが必死にシュウのズボンを捕まえている。その好意は一歩間違えたら大変な好意になるのだが、ハルカはそれに気づいてはいない。 「…お気持ちはありがたいんだが、それは遠慮させてもらうよ。今度からは流されないように気をつけるんだよ。 」 ハルカにバンダナを手渡すと、シュウは何も言わず、その場にあったにあった自分の荷物を持つと、ハルカ達に背を向け右手の二本の指をちらつかせて、『また会おう』とサインをして、ハルカたちの目の前から消えていった……。 「お礼はまた…別の方法で貰おう…。」 ハルカたちが見えなくなりシュウは小さく呟いた。 ロゼリアとシュウが歩く道にはクチナシの花があふれていたと言う…。 花名≪クチナシ≫ 花言葉≪喜びを運ぶ≫ ------------------------------------------------------------END--- 作者より… 短!!すげぇ短い!!短編小説にすら成り立たないよ!! というわけで、しょっぱなからシュウです。 この話は夢に出てきました(笑) 本当はバンダナじゃなくて、ハルカが屋台ですくった金魚が 流れてシュウが水の中に入って拾っていたのですが…。 バンダナの方が絵になりそうだったのでそちらにしました。 好きな子のためなら一生懸命になれる男の子は見てて萌えます。 日ごろから一生懸命が見えてるんじゃなくて、土壇場になると 姿がうかがえるほうが好きです。 クチナシの花言葉の『喜びを運ぶ』はバンダナに例えました。 バンダナが流れてきた事でシュウの喜びであるハルカが来たので 何となく使えそうだと思い、このタイトルに…。 (ありがとう花言葉図鑑(366日用)…。) シュウハル…萌えます…。 2003.12 竹中歩 |