僕らに特別なんていらない。
僕らはいつもが一番安心できるから





ピンクッション〜pincushion〜






「お客さん旅の人かね?」
「ええ。ポケモンコンテストを目的として旅をしています。」
 少年は店の店主である老年の男性に声を掛けられると言葉に笑みをつけて返す。
 少年の名はシュウ。美しい物を好み、美しいポケモンコンテストをするので有名である。さらに容姿も美しいに属される。まさにこの少年を言葉一文字であらわすなれば『美』という文字が相応しいだろう。
「若いのに大変だね…いや、若いからこそできる冒険か。」
 グラスと一つ手にとると真っ白な布巾で丁寧に磨いていく。立ち寄った時には単純にコーヒーが飲みたいと思って入っただけの店。でも、入って正解だったと思える。規模は大きくはないが個人経営店でも店の隅々まで清掃され、尚且つ頼んだ一杯のコーヒーは温かくホッとする味。そして店主も優しそうな男性。シュウはその場の雰囲気に軽く酔いしれていた。
「そうだ。ポケモンコンテストとは関係ないけれど、お客さんはラルースには行かれるのかい?」
「ラルース?…ここから少し離れた機械都市ですか?」
「そう。見ての通りこの町には何もないけど、ラルースには面白い物がたくさんあるよ。」
「興味はありますけど…僕はどちらかと言うとこう言う落ち着いた町のほうが好きなので。」
「そうかい?そういってくれると嬉しいよ。」
 店主は朗らかな顔で少年に笑を向ける。
「でも、アレは1度見ていたほうが良いよ。アレはラルースにしかないから。」
「『アレ』ですか?」
「ああ。…そうだ。今なら今週のバトルの様子が生中継されてるはずだよ。」
 そういって店主は消されていたテレビの画面をつける。その瞬間テレビからは物凄い大人数の叫び声とも取れる大きな音が耳に届いた。
「ありゃりゃ。ちょっと声が大きかったな。」
 テレビのボリュームを店主が下げるのと同時にシュウの目にはかなり多くの観客と今戦おうとしていた少年二人の姿が目に入る。
「これは?」
「ラルースのバトル会場さ。ここはタッグバトルでやるんだけど、偶然に一緒になった人とも戦ったりするんだ。それに会場がハイテクだから少し違ったバトルが楽しめる。どうだい?お客さんも少しはやりたくなったんじゃないかい?」
 確かに画面に映っている会場の施設は今まで見てきたことのないものばかり。これはコーディネーターを抜き差しにしても興味が倍増する。
「面白そうですね。」
「ああ。わしもこのバトルを生で見ると俄然夢中になってしまうんじゃよ。」
 楽しそうに話す店主の声。それと同じくして瞳はさらにきらきらと輝いていた。シュウはそんな表情を見つつコーヒーを口に運ぶ。と、その瞬間テレビから一際は大きな少年の声がこだまする。



「ハルカちゃーん!!」



 その呼ばれた名前にふと手が止まる。決して自分のことではない。だが、その前には自分の名前と同じく思い入れがあったため…無意識に画面の方向へと目が行ってしまった。
「(ハルカなんて名前珍しくもないし…男子かも知れないし…)」
 しかし、画面に目をやった瞬間…自分の目を…頭を疑った。
「な…んで……」
 最初に映ったのはその声の根源である男子。恰幅が良くいかにも運動系と呼びたくなる熱血形の少年。その少年は名前を叫んだあと、ボディーランゲージでハルカと呼ばれる人への愛情表現を送っていたのだが…その送られている相手は…
「ハルカ君…」
「おや?知り合いかね?」
「知り合いと言う言葉じゃ多分足りないです。」
「だったら尚更ラルースに行くべきだよ。」
「そうみたいですね。なんが嫌な胸騒ぎがしますし。それじゃ、マスターご馳走様でした。」
「気をつけなされ。」
 店主の声を背にシュウはその喫茶店を後にした。










「(確かここから1時間くらいでラルース行きのモノレールの駅が…)」
 店主から教えてもらった道筋をマップ上で辿っていく。モノレールの場所まではそう遠くないが、問題は今日乗れるラルース行きのモノレールがあるかということ。シュウが店を出たのは午後4時過ぎ。さっきの店主の言葉だとこの地方はかなりの田舎らしい。田舎と言うのは電車やバスの停車率が著しく低いと聞く。ならばその定義はモノレールだと更に当てはまるだろう。そう思ったシュウは少し駆け足で駅へと向かった…。しかし…


「もう、今日はないんですか?」
「最後のが4時に出ちゃったからね。祝日とか土日なら6時の便があるけど。次は始発で…朝の9時くらいの奴しかないね。」
「ラルースに一番近い駅はここなんですか?」
「いや、ラルースに着く手前には小さな駅が何駅かあるけど、今日はそこすら行く便がないんだ。」
「そうですか…ありがとうございます。」
 駅員に軽く釈をするとその場を重い足取りで立ち去る。
「早く行きたいのに…」
 もし…画面に映ったのが彼女…ハルカ一人ならここまで急ぐことはなかったかもしれない。だが、問題はあの愛情表現を送っていた少年だ。アレは傍から見ても…ハルカに気があるのは間違いなかった。
「全く。こんなところまで来ても君とは中々離れられないか。」
 シュウがここまで深くこだわる少女…名はハルカ。ドジで少し我侭が入っているがポケモンコンテストでの腕前は中々の物。天真爛漫としているが実際にはかなりの努力家で…どこか目が離せない。こうやってハルカを気にするようになってどれくらい経ったか分からないが、未だにハルカに好意を抱く男子が現れると気が気じゃないのはやはり…
「嫉妬…もしくはヤキモチ。」
 自分でも分かっているこの感情。しかし、表に出すことはない。それは自分の美意識に反するから。そうやってシュウはここまで来た。今回ここまで急いでいるのはその嫉妬と言うあの少年の性だろう。
「ま、考えてたってしょうがない。今日はこの近くで泊まることにするさ。」
 そうやって…朝が来るのを待つはずだった…だが…あの時感じた胸騒ぎは違う形でシュウを襲うこととなる。










「どうなってるんだ?…」
 一夜明けた朝10時…ラルース駅に着く直前、小さな駅でモノレールはストップした。小さい駅なのに何故か大荷物を持った人でごった返している。しかも、その人たちの多くは皆不安に満ちた表情。シュウはその中の一人に声を掛けた
「あの…ラルースで何かあったんですか?」
「さぁ…それが俺たちのも良く分からないんだ。ラルースの緊急避難警報が鳴って、そのままここまで非難してきたんだけど。どうかしたのかい?」
「実はラルースに友人が行っていて…それを追いかけてきたんですが…」
「観光客か…ラルースは見ての通り海に囲まれてるだろ?避難場所なんて下手したら三桁に登るくらいあるからね。ちょっと難しいかもしれない。」
「そうですか…」
「あら…貴方達状況知らないの?」
 青年と話していたシュウに話の内容を知ってか一人の女性が話し掛けてくる。
「知ってるんですか?」
「私、最後の方に避難してきたからある程度は目で見てきたの。何か見たことのないポケモンが沢山の人たちをさらって行ってたの…。その時になんていうのかな…ラルース全体にバリアみたいな物が張り巡らせれて、今、外部との接触は絶望的らしいわ。」
 シュウだけではなく青年すら黙ってしまった。まさか…そんな状況になるなんて誰が思っただろう。
「あの、誰が何処に避難したかって言うのはわからないんですか?」
「あ!今思い出した!これこれ!」
 青年はポケットから一枚の赤いカードを取り出す。
「それは?」
「ラルースのパスポートみたない物さ。これが身分証明書にもなるし財布代わりにもなる。これは観光客でもラルースに入ったと同時に作られるんだ。だから、君の友人て子も持ってると思うんだけど…」
「で…それをどうすれば?」
「そうか…外部に非難しているなら所在地が分かるかもしれない。てことね?」
「そういうこと。」
「そんな機能があるんですか?」
「ええ。このカードを持っていれば何処にいても分かるようになっているの。ラルースでは子どもの迷子とかには良く使われているのよ。でも、外部で使うのなんて初めてだから上手くいくのかしら…それにコンピューターがなければ…」
「その点は大丈夫!」
 自信に満ちた笑みを浮かべた青年は背中の荷物からノート型のパソコンを取り出した。
「こう見えて俺はラルースの中央で働いてる人間だからね。こう言うときの対処をマニュアルで見たことあるんだ。確かこうやって…ここのセンターに接続すれば…ほら!やっぱり出来てる。掲示板とか人探し用のサーチ。」
「あの…探してもらえますか?」
「任せろって!その子名前は?」
「ハルカ。多分マサトとかサトシとか何人かで固まってると思うんですけど…」
「ハルカちゃんね。ちょっと待ってろ。エーとこれで…検索結果が…」



人探しサーチ
検索人名:ハルカ
検索結果:…………発見できませんでした。



「まさか?!そんなことあるはずがない。」
 青年の声が駅にこだまする。
「今アクセスが込み合ってるとかはないんですか?」
「いや、それはない。こう言うのってアクセス込み合わないようなでかい容量使ってるんだ。」
「あの…避難場所以外に行ったとかは?」
「例え何処にいても分かるはずなんだ…。後残ってるとすれば…接触が途切れてる…ラルース…」
 シュウの体に寒気が走る。いつもなんだかんだ言って運の良い彼女のこと…きっと逃げてるはず。
「他の名前でも探してもらえませんか?彼女のことだから踏んでカード壊してる可能性もあるんで。」
「そうね。この騒ぎだったら誤って落として壊れてる可能性もあるわね。」
「えーと、じゃ…サトシって子でいいか?」
「お願いします。」
 しかし、何度やっても…名前を変えても検索結果は一緒だった…。
「ラルースから出たあとだったら発見できないって可能性は?」
「それもない…そんな状況だったら、ここには発見できませんじゃなくて『既にこの街を後にしています』てでるんだ…。」
 その青年の言葉がどんどんとシュウに嫌な汗をかかせる。二枚服を着ていも暑く感じないのに…いや、暑くてかいているんじゃない。なんとも言われない嫌な感触の汗。
 無言が続いた3人の耳に駅のモニターから聞こえるニュースが届く。その画面に映っていたのは…見たこともない人型をした赤いポケモンと緑のリュウのようなポケモン。
「ニュースをお伝えします。ただいまラルース謎のポケモンの襲撃のため外部との連絡が取れなくなっています。避難された方々は各担当者の案内に従ってください。尚、現在ラルース内に存在している模様の方々の名前は以下の通りです。」
 5人ずつテロップで映っていく名前…その中にあって欲しくないと願いつつシュウは祈るような気持ちで画面に食い入るが、その願いは空しく…砕け散る…





カンコウシャ
サトシサン
ハルカサン
マサトサン
タケシサン
………サン





「あれって…君が言ってた名前の人間ばかり…」
「逃げ遅れてる…」
「なんでこんな時ばかり!!」
 シュウの悲痛な声は駅に大きく響いた。
「すいません。色々調べてもらったのに…」
「俺はいいけど…」
「気を落とさないで。ラルースの防犯システムは完璧だから…。」
「はい。とりあえず、行ける所まで行って見ようと思います。」
「ここまで話したのも何かの縁だ。こっち来な。」
 青年はシュウを駅の外まで案内すると自分のモンスターボールを一つ取り出す。
「フライゴン!!」
 中から出てきたのは緑色でしなやかな体をしたドラゴンタイプのポケモンのフライゴン。
「こいつに乗っていくといい。俺のフライゴンはラルースの地理に詳しい。どこに着地すれば良いか直ぐに分かる。」
「でも、危ないですよ!さっきのテレビじゃ…何か外側からバリアを攻撃しているポケモンもいましたし…」
「安心しなって。こいつ臆病だから無理はしない。それに君を連れて行くまでしか出来ない。君を下ろしたら戻ってくる。さっき行ったように臆病だから長居出来ないんだ。片道でも…行くかい?」
 青年の問いかけにシュウは強気な笑みで返す
「片道でもいいんです…。ありがとうございます。」
「良いってことよ!ほらいきな!!」
 フライゴンは乗った瞬間に大きな翼を二枚上下に二回振った後一気に急上昇をした。
「これで、傍までいける…お願いするよ…フライゴン。」










「私たちどうなっちゃうのかな…」
 ラルース内に閉じ込められたハルカ一行そして、ポケモンが怖くて触れない少年トオイに、この町ではじめてサトシと戦ったリュウ。本来ならもう一人ショウタと言う少年とも戦ったのだが、既に連れ去られたあと。リュウの妹の双子オードリー、キャサリン。そして、この原因を突き止めようとする女性ヒトミ。このメンバーはひょんなことかた知り合い今同じ時を過ごしているが、その時間は不安と言うとても変えがたいものだった。
「そんなに気を落とさないでよ。」
 マサトの慰めにオードリーとキャサリンは何とか笑顔を作る
「でも、ショウタはどうなったんだろう…」
「サトシ、そんなに暗くなっちゃ駄目だ。な?」
 サトシの気落ちに今度はタケシが背中を押す。だが、その輪の中にハルカはおらず、階段の片隅でオードリーのアメモースを抱いたまま物思いにふけっていた…。
「ねぇ、マサト君?」
「ん?」
「何でハルカさんは私のアメモース抱っこしてるのかな?」
「あ、ごめん。お姉ちゃんに離す様に言って来る。」
「ううん。別にその辺はいいの。自分のポケモンが出てるけど抱っこしてなくて隣で寄りかかってるて感じでしょ?それなのになんで他のまで抱っこするのかなーって。」
「うーんと…あ!あ〜…なるほど。アメモースってそういうことなんだ。」
「どういうこと?」
 2人の会話にキャサリンも話の輪に加わって来る。
「多分、あいつのポケモンもアメモースだから…。」
「あいつ?」
「嫌味ですぐ人のことばかにするんだけど、バトルの腕はすごくいいおねえちゃんがライバル視する奴がいるんだ。そいつ、アメモースもってたから…」
「何?ハルカさんの彼氏?」
 女の子はこう言う話が好きだ。不安は何処へやらキャサリンとオードリーのヒトミはラメいるのごとく輝いている。
「違うと思うけど…なんていうのかなお互い気にはしてるけど表に出すの苦手みたい。でも、友人以上ではあると思うよ。」
「「なんか意味し〜ん!」」
 そんな3人をよそにハルカはアメモース抱きしめたままやはり上の空の状態を保っていた。





「だめですよ。」
「あ……リュウ。」
「僕らがしっかりしなければ。なんせ、兄弟の一番上ですからね。」
 指差した方向に少し笑が毀れるマサトとオードリーとキャサリンの姿が映る。
「そうね…上だもんね。しっかりしなくちゃ。よし!気を取り直そう。…そういえば、リュウってあいつに似てるかも。」
「あいつですか?」
「ほら、トオイがクッキーを持ってくる前にサトシと話してたじゃない?『いつでも相手になりますよ』て。そんな風に人の神経逆なでする知り合いがいるの。」
「別に逆なでしたつもりはないんですけど…」
「あっはは。ごめん。確かにリュウの方が何倍もマシかも。敬語だし。ちゃんと優しいし。私の知ってるあいつはいつも嫌味ばっかりで私のこといつも怒らせてばかりだけど…ちゃんと本当のこといってくれるの…ただ不器用なだけなのかもしれない。リュウに雰囲気にてたし。名前も似てたからちょっと思い出しちゃった。」
「よほどのその人は…あなたに思われてるんですね。」
 リュウのその意味深な指摘に顔を真っ赤にさせると断固として否定をするハルカ。
「冗談じゃないかも!!」
「はは。ショウタの失恋も決定ですね。それじゃ、頑張りましょう。お姉さん。」
「もう!…分かったわよ!頑張りましょう!お兄ちゃん!」
 こうして…再びこのメンバーの脱出計画は実行されることとなる。










「一般の方はこれ以上は入らないで下さい!!」
 フライゴンは青年の言うとおり地理に詳しく、シュウの行きたかった場所…つまりラルースに一番近い場所に下ろしてくれた。シュウを下ろした あとフライゴンは頑張ってというようにまた空高く消えていった。
 下ろされた場所では野次馬の人だかりやシュウと同じく知り合いが中にいる人々が近づこうとして必死だった。
「あの…なかの状況はどうなんですか?」
立ち入りの場所にはだかるジュンサーに話し掛ける。
「今のところ何の進展もなしよ…。中には入れなくて…色々やっているのだけど。中のあの赤いポケモンは未だ奇怪な行動を取っているし…あの空のポケモンレックウザと言うのだけれど、アレすらも中に入れないの。」
 やはり、近場に来たところで状況は変わらずだった。間じかにして初めて見るレックウザというポケモンはこの野次馬以上に中に入ろうとして必死なのは見て取れる。
「あ……」
「え?」
 ジュンサーの声に反応して目線の先をみると…見る見るとバリアが消えていく。
「一体何がどうなって…?」
「あれよ!」
 目先のバリアにばかり目を取られて気づかなかったがレックウザが漸くラルースに進入に成功した。
「きっとシャボン玉と同じ構造だったのね。」
「シャボン玉…ですか?」
「一ヶ所が割れると全てが消えていく…そういう構造だったのよ。これで中には入れるわ。」
「あの…僕も一緒に入っては駄目ですか…。」
「え…」
 突入準備を進めるジュンサーにシュウは真剣な眼差しで同行することを願う。その瞳を見たジュンサーは少し動きが停止したが、気を取り直したあとシュウの肩を軽く叩く。
「中はとても危険よ。私たち警察でさえ未知の世界だもの。そんな中に君のような一般人は連れて行けない。」
「…足手まとい…ですか…。」
 下唇を噛む様にして零した言葉。それと同時に強くにぎしりめられた拳。










 いつも守りたい時には傍にいない…
 土壇場にたたされたら何も出来ない…
 君の無事を願うことしか出来ない…
 何も…出来ない…










「そんな風に考えないで。」
「いえ…足手まといになることは重々承知でした。それに確かに中は危険ですからそうやって注意を受けることも分かってましたし。」
「そうね…全てじゃないけれど君の言うことは本当のことよ。現場に入ったとたん君の様な人は必ず探したい人のことしか頭にないから、注意力が散漫になるの。そうなると…どうなるか分かるわね。」
「…大怪我をする…」
「そう。だからそうやって怪我人を増やさないためにもここにいてもらうのが一番なの。それに…君には出来ることがあるはずよ。」
「出来ること…?」
「君が探している中の存在者の名前は?」
「ハルカ…茶色い髪の女の子です。」
「そう、ハルカちゃんね。」
 ジュンサーは名前を聞くとなにやら手帳に書き込んでゆく。
「君に出来ることは…彼女を安心させることよ。」
「…どういう事ですか?」
「少なからずこう言う事件に巻き込まれるってことは混乱を起こしているの。そういう人にとって安心を与えられるのは家族や友人のお帰りとかって言う言葉。それだけ『ああ帰って来れたんだ。』て安堵するのよ。だから、君がやるべきことは中に突入して大怪我をしたりすることじゃない。その女の子を安心させること。分かる?」
「…分かります。そうですね…こんな状況に突っ込んでいったらそれこそ彼女に怒られそうな気がします『何でこんな危険なところに!』て。ジュンサーさんの言うとおりここで…待ってます。彼女に一番近い場所で。」
「ありがとう。もし、その子に会えたらあなたが待ってること必ず伝えるわ。それじゃ!行ってくるわね!」
「お気をつけて。」
 その言葉と同時に警察及び兵隊の突入が開始された……










 結局、赤いポケモン…デオキシスは数年前に行方不明になった仲間を探しにこの町へと来ていた。しかし、その場所がレックウザの縄張りであったためこんな戦いが生まれてしまったらしい。そして、そのバトルが終了して漸くハルカたちは解放された…。
「あー…もうこんな思いはこりごりかも!」
「本当だよ。僕ももう散々!」
「でも、空飛べたのは面白かったぜ!」
「サトシは相変わらずだな。」
 いつもと変わらないサトシ達4人
「でも、トオイ君はポケモンが触れるようになったんですね。」
「うん。僕も驚いてる。」
 リュウの言うとおりトオイはこの事件が切欠でポケモンに触れることが出来た。
「ねぇ、私のポケモンと今度バトルしましょう。」
「ヒトミさんのメタグロスとか…く−−−−−!!燃えるぜ!」
 ヒトミはサトシの野性的な戦い方に興味を覚えたらしい。
「マサト君もポケモン持ったらバトルしようね。」
「あ!私もしたい!私のアメモースとのバトルとか!」
「いいね!約束だよ!」
 年の近いキャサリンにオードリーとマサトの間では次回の約束が交わされていた。そして、漸く再会の出来たショウタは…
「ハルカちゃん、この町案内するからさ、これからデートしない?」
「デートォ?ついさっきまで戦ってたのに!」
 そんな他愛もない会話のメンバーにサイレンが徐々に徐々にと近づいてくる。それは、視界に入って漸く分かった。バイクにまたがったジュンサーだと言うことに。
「君たちの中にハルカちゃんて女の子はいるかしら?」
「わ、私ですけど?」
 行き成りの質問に戸惑いながらも答えるハルカ。
「良かった。あのね伝言と言うまででもないのだけど…あなたを待ってる人がいるわ。」
「私を…ですか?」
「ええ。あー…名前を聞き忘れたわ…。緑色の髪男の子が…あなたを待ってるはずよ。」
「緑の髪の男の………あーーーー!!」
 ハルカの頭の検索で一人の少年がピックアップされる。
「紫のジャケットのですか?!」
「そう。」
「あの…ハルカちゃんデートは……?」
 少し眉間にしわを寄せ、俺のことを忘れないでと言わんばかりのショウタにハルカは少し笑って
「ごめん、ショウタ。デートより先に会わなきゃいけないみたい。じゃ!またあとで!」
 その言葉を残し、ハルカは一人で走っていってしまう。
「そんなー!!」
「ショウタ…失恋決定ですね。」
「リュウまで…。」
「「ハルカさんの彼氏〜」」
「2人ともあいつはおねえちゃんの彼氏じゃないってば!!」















 立ち入り禁止のロープギリギリで待つ緑の髪の少年。



 今回の事件のことで分かったことが一つある。
 それはどれだけ自分が彼女を思っているかと言うのさらにわかったと言うこと。
 元々はあの体格のいい少年が気に入らないと思ってこの町まで来たけど、
 今はそんなこと忘れていた。
 ただ…君の無事を願うだけ。本当にそれだけを思った。
 その時の胸の痛みは今でも忘れない。
 だから、この痛みの分だけまた彼女を怒らせようかと思う。
 それぐらいのことはさせてもらわないと腑に落ちないよ。
 でも、せめて最初にあったときくらいは…















 立ち入り禁止のロープまで走る茶色い髪の少女。



 今回の事件のことで分かったことが一つある。
 それはどれだけ自分があいつのことを思っているかと言うこと。
 不安になった時家族の顔が最初に浮かんだけど
 その次に浮かんだのはあいつの顔。
 何で浮かぶのか分からなかったけど、
 その顔を思い出すだけで何故かその時は不安が安らいだ。
 あの嫌味を思い出すだけで元気になれた。
 だから、再会したらすごく嫌味とか聞きたいって思ったけど
 それってやっぱりちょっと変かも。
 でも、せめて最初にあったときくらいは…










 最初に会ったときはお帰りとただいまじゃなくて
 いつもの2人の挨拶をしよう。
 それだけでお互いの無事が分かる。
 僕と私の再会の合図。










「久しぶり。」
「…どうしてこんな所ににいるの?」










 ほらね…このやり取りだけで笑顔になれる
 特別はいらない。
 これがいつもの僕と私だから…









花名≪ピンクッション≫ 花言葉≪共栄≫
------------------------------------------------------------END---
作者より…
映画地上放映記念小説です。
昨年の映画を見た瞬間から書きたいと思っていたのですが
見ていない方たちにネタバレになる可能性があったので
今年書くこととなりました。
フライゴンの話は先日出来たばかりですが、
シュウがショウタのVTRをみてラルースに行くとか
シュウがハルカの為に必死になるところとか
ハルカがアメモースでシュウを思い出すとか
その辺はネタ当時のままです。
リュウお兄ちゃんは書きながら出来ました。
花言葉の共栄はお互いが想って想われるという意味を
こめてこの花にしました。

そして、この2人の後の会話はこんな感じ。
シュウ「そろそろ飛行タイプのポケモン持とうかな…」
ハルカ「え?アメモースじゃ駄目なの?」
シュウ「アメモースじゃ移動できないからね。」
ハルカ「ん?」
そんな感じであの見ず知らずの男性の影響を受け、
フライゴンを持つことにしました。
いざと言う時の移動手段のためでわ(笑)

そしてシュウの復活が何より嬉しいです。
OP復活は睨んでましたけどハーリーさんも復活。
今年のシュウハルは昨年より波乱万丈に
なりそうな予感です
2005.9 竹中歩