結局…先のことなんてよく分からない でも、何があろうと… 僕は君の事を…… ペツニア〜petunia〜 4つ目のリボンをゲットしてどれくらい時間が経過しただろう? かれこれ半年以上は経過したかな… 回想にふける少年が一人。ポケモンコーディネータの間ではかなりの有名人名を『シュウ』と呼ぶ。 歳は10代に漸く差し掛かったところ。歳相応には思えない落ち着きや、その綺麗な顔立ち…そしてポケモンバトルなども強いとなればファンの多さは数知れず。ちなみに美しいものを好む事でも有名。 「あと…一つ…」 リボンをコレクションしてあるホルダーを眺めながらそう呟いた。 何故半年以上もその状態を保持しているか…別に負け続けたわけでは無い。 『わざと』コンテストに出ていないのだ。理由は…… 「隣良い?」 後ろから不意を付かれた声。声の主はやはりシュウとそんなに歳が変わらない少女『ハルカ』。 赤いバンダナが彼女のトレードマーク。コーディネーターとしてはまだまだ序の口だが、その成長の早さや起点などで数々の大会を制覇している。ある意味シュウよりも有名人かもしれない。 「…どうぞ。」 「ありがとう。」 ハルカはコーヒーカップ片手にシュウの真正面の席へと座る。この二人の出会いはもうずっと前のことで、出会って以来ライバルであり、よきアドバイザーと初心者、友人関係と色々な関係を持ち合わせているが、仲が良いのか悪いのかそれは本人達も分からない 「珍しい所で会うね。」 「本当…最後に会ったのって…かなり前よね?」 「でも…君がいつものように『何で此処にいるの?』と聞いてこないのは余計に珍しい。」 「あれは意識しないで視界にシュウが入ってきたときだけだもん。今日は先にシュウ見つけて心構えがあるから言わないだけ。」 「先に?」 「うん。このコーヒーショップに30分くらい前からいたでしょ?その時にね。」 「『見つけた』と言うわけか。」 「そう言う事かも。」 そう、シュウがわざと大会に出なかった理由…それは…彼女が自分にのリボンに並ぶまで待つこと。先日彼女は漸くシュウと同じ『4つ』に並んだ。 外見はコーヒーカップだがハルカの飲んでいるのはキャブリックティー。蜂蜜の入った紅茶。いかにも甘そうな飲み物である。甘党のハルカとしてはかなりの好みの甘さ。 「甘い物…本当に好きだね。」 「そう言うシュウは相変わらずブラックコーヒーよね。」 「甘いと余計にコーヒーは苦くなる…余計な苦さはいらないから。」 「気取っちゃって…でも私たちこうやって話とかお茶するけど結局はお互いの事コンテストに関係あることと名前ぐらいしか知らないのよね。」 ハルカと言うことに間違いは無い。改めて考え直すが確かにお互い素性は良く知らない。 「お互い話す機会もなかったし、聞くことも聞かれる事もなかったからね…」 「そうなのよ。それが不思議なのよね?」 「なにが?」 「だって、私仲良くなった人の誕生日とか血液型とか真っ先に聞くのにシュウには聞かなかったんだもん。」 「それはつまり君は僕に対して仲良くなろうと言う心がけがないからじゃ…」 少し皮肉を混ぜていってみる…シュウのお約束『愛情の裏返し』 「そんなことモンスターボールほども思ったことないわよ。」 「比較の基本が分からないよそれじゃ。」 「あはは。だけど…聞かなくても情報って入ってくるものだし。この前のルイボスの時はツキコさんから永遠にシュウに関する情報とパパの情報を聞かされたから…」 「デマとか流れてないだろうね?」 「それは無いと思うけど。あ、でもシュウ本人に言っちゃいけないこともあるからこの話は伏せとくね。」 「(なら始めから言わなければいいんじゃ…)」 そんなことを思いつつ湯気が消えうせたコーヒーカップに手を伸ばす。 「でも、そのファンの人たちにも分からない事あるらしいよ。」 「それはそうだよ。何でも知られてたんじゃ気持ち悪いし。」 「だよね。」 「君もそうじゃないのかい?トウカシティジムリーダーのご令嬢さん。」 「はぁ…シュウも知ってるのね…やっぱり。」 「それこそルイボスで騒がれていたからね『センリさんの娘』なんて。」 「そうなのよね…どうやってキタトウカ以外の人たちが知ってるのかが分からないのよ。テレビにだってジムリーダーの子供として映ったことないし…顔も似てないでしょ?」 「僕も聞いた時は正直驚いたよ。ジムリーダの娘がどうして此処まで世間知らずなのかと」 「悪かったわね。言っておきますけど、私は私!パパはパパよ。だけど、本当にどこから情報漏れたのかしら?」 「もしかしたら色々調べられてるんじゃないのか?コーディネーターとして。」 「なら嬉しいかも。」 嬉しいと言いつつ少し顔が曇っているハルカ。このように煽てられて一度痛い目にあっているからどう対処して良いかまだ分からないようだ。 「そう言えば…シュウって将来の夢…あるの?」 「君は登場の仕方も話し方も唐突だね…話を切り替えるときはもう少し気を使いなよ」 「ごめん…でもあるんでしょ?夢。」 「とりあえずグランドフェスティバルで優勝する事…美しいバトルやポケモンを極める事…かな。」 「聞かなくてもわかる内容ばっかり…」 「君が聞いたんだろう?…それじゃ、君の夢は?」 「私?…ん〜…とりあえず、私も優勝する事。その後は考えてないかも。」 「以外だね。君なら数え切れないほどの夢でも読み上げると思ったのに。」 その厭味に対してキャブリックを飲むハルカの顔が少し怖く見える。 「だって、今は目の前の事でいっぱいなんだもん!悪い?」 「いや。僕はてっきりジムでも継ぐのかと思ってたから…」 「……なんで?」 「なんでって…普通そう考えないかい?君もサトシ君達と旅をしているなら子供がジムを継いだところを見てきていると思ってたけど…」 「ああ…そうよね。タケシも息子だから継いでたかも。今はお父さんに預けてるらしいけど。」 「彼はジムリーダーだったんだね。だからバトルのとき審判してたんだ…なら、君は継ぐ気は無いのかい?」 「…どうだろう…考えた事ないから…今はマサトが後継者として一番最有力じゃないかな?マサトが継いでくれたら私は旅にも出れるし…」 呆気羅漢と話す彼女に少し顔が綻ぶ。 「それに…未来は一つとは限らないでしょ?もし、マサトが研究者になりたいって言えばジムは他の人の手に渡るかもしれないし、私がやりたくなったらやってるかもしれない。それに、私が結婚して旦那さんが強ければその人になるかもしれない。まぁ、パパを負かさなきゃいけないし、認められなくちゃ無理だろうけど。ある意味バッジゲットより難しいかも。」 「それはそれは。…それで、僕はポケモンセンターに戻るけど君はどうするんだ?」 「あ、私も戻る!」 その会話が交わされた席には二つのカップだけが残っていた…… ポケモンセンターに戻る途中シュウは一件の花屋へと立ち寄る 「シュウってやっぱり花…好きなのね。」 「花屋は美しい物の宝庫だからね。…そうそう。面白い物を見つけたよ。」 「面白い物?」 シュウがそう言って持っていたのは花の種が入った小袋 「何の花の種?」 「…ペツニア。本来今の時期に咲く花だよ。君が今日将来の話をしていたからね、ネタ的に面白いと思って。」 「だから何がどう面白いのよ?」 「花言葉は『決して諦めない』今の僕らに相応しい言葉だと思うよ。お互い優勝と言う物を諦めずに此処まできてるからね。」 「なるほどそう言う事ね。」 「グランドフェスティバル終了後はどうせ一回家に帰るだろう?その頃に植えれば丁度今の時期に咲くよ。」 「うん。植えてみる。そこからまた次の夢…探すかも!」 「…なんてことを彼女は言ってたよ…ねぇ、アメモースにロゼリア…君たちは僕の夢…付いてきてくれるかい?…そう…ありがとう。きっと…行けるさ…今の僕らならね…」 将来なんて君が思うほどちゃんと考えた事なんてなかった。 でも、今日のことで一つ将来の目標が出来たよ。 まず第一段階としてフェスティバル優勝後に… キタトウカジムで腕試しでもするさ… 何があろうと… 決して諦めないから… 花名≪ペツニア≫ 花言葉≪決して諦めない≫ ------------------------------------------------------------END--- 作者より… 何だかんだいって一年経ってしまいました。 サイト一周年と言う事で一番最初に書いた 花言葉シリーズの復活で。 今回は凄く書きたくてしょうがなかった話。 センリさんとシュウがらみ。将来のお義父さん(笑) センリさん絶対シュウと良いライバルなると思うんだけどな。 もしくは良い酒飲み仲間。 決して諦めないはセンリさんに認められるまでと言う意味です。 いつか見てみたい…そんな二人を… というわけで一周年ありがとうございます。 これからも末永くよろしくお願いいたします。 2004.11 竹中歩 |