七夕… それは昔から伝わるグリム童話にも似た おとぎ話の一つ。 一組の男女の悲恋の物語…… 願い事〜Milky Way〜 「なんかさぁ、織姫と牽牛って私とシュウみたいよね。」 「?!」 そのあまりのあどけなさ、場に不似合いなハルカの言葉にシュウは自分の持っていた缶コーヒーの缶を落としかける。 「あ、ごめん。驚いた?別に2人の関係と恋愛とかが似てるってわけじゃなくて一定の日にしか会えないてことが似てるなって…」 「あぁ…そういう事か…」 つまりハルカが言いたいのは、牽牛と織姫は一年の今日…つまり七夕の日にしか会えない。それは日にちを限定されているということ。ハルカ達も似たようなもので、ポケモンコンテスト開催地でないとあまり会う機会がない。そう言う事が言いたいらしい。 「まぁ、私とシュウは二人みたいに愛し合ってるわけじゃないから『愛しい』とか『寂しい』とか『悲しい』じゃなくて、『面白くない』て感じだけどね。」 公園の石段に座って、オレンジの缶ジュース片手に笑うハルカ。だが、シュウにとっては<その言葉の一つ一つがとても痛い。確かにハルカの言うとおり『面白くない』と言うものもあるが、牽牛と織姫のような間柄に生まれる感情『愛しい』も含まれるようだ。 「…でも、元々二人が会えなくて、そんな思いをする状況を作ったのは誰でもない本人達だよ…」 「え?…そう言えば聞いたことがあるかも。2人が働かなくてそれに怒りを覚えた織姫のお父さんが2人を離させたて話。」 そう…七夕の由来となる話… 働き者の牽牛と機織上手な織姫は深い愛で結ばれていた… 所が結婚を機に愛し合うあまり仕事が疎かになる。 牛飼いである牽牛は牛の世話をせず織姫のことばかり… 織姫は機織をせず牽牛の事ばかり… これに怒りを覚えたのは一番彼らの結婚を喜んでいた天帝。 そして天帝は二人のためを想い、天の川を作らせた 離れ離れになった二人は嘆き悲しむ。織姫の悲しみは深く… 父親である天帝を苦しめた… そんな2人を見て天帝は一つの方法をとる。 それは『七夕』の日だけ…年に一度だけ二人を引き合わせると言うもの。 それを聞いた二人はその一日のためだけに仕事に精を出し働く事となる。 そして…七夕の日…二人は… もう二千年も昔の話… 「確かそんな話だったね…」 数年ぶりに七夕の話を思い出すシュウ。 「でも…そんな話聞くと余程、織姫って父親に愛されてたんだよね…よくそんな所に牽牛もお婿さんに行ったよ…。」 「それだけ…織姫を愛してたんだよ彼も……」 「そうだ!今年の短冊の願い事決めた!」 ハルカは飲みあげた缶ジュースの缶をごみ箱に放り投げると足早にポケモンセンターへとかけていく。大体この時期になるとポケモンセンターには短冊やら笹やらが置いている。きっとその方向に向かうのだろう。シュウも一気に珈琲を飲み干すとハルカの後を追いかけていく。 「願い事…何にするんだい?」 シュウの予想では『ポケモンコンテスト優勝』などと思っていたのだが…今日はどうも調子が悪い。その予想も大きく外れる 「『今日が晴れて、2人が会えますように!』てことにする!」 あっけらかんとハルカは後方から走るシュウにそう叫んだ。 「どうして…コンテストがらみの願い事じゃないんだい?」 「だって……」 走るのをピタッと止めたハルカは… 「コンテストの事は『願う』じゃなくて『叶える』ものだもの!」 以外だった。そんな言葉が出てくるなんて… でも… 彼女らしいとも思った… ポケモンセンターに着くとハルカは短冊に先ほどの願いを書く。 「シュウはなんて書いたの?」 「ん?…『カササギが来てくれますように』て書いたよ。」 「か…カササギ?」 「そう。カササギ。」 君は知らないだろうけど… もし雨が降って天の川が増水したら… カササギが来て二人を引き合わせてくる。 だから僕はそう願った。 だけど…一番の願いは… 自分の事より人のことを優先させる君と一緒で… 自分で叶えるよ… 自分でね… ------------------------------------------------------------END--- 作者より… 短いよ…凄い短いよ自分。殆ど詩じゃないか! しかもシュウハルなのかこれ?! どっちかって言うと牽牛×織姫の話じゃないか!! しかも途中まで牽牛にするか彦星にするか悩みました。 私の中では彦星だったんですが… 七夕を調べたら牽牛のほうが多くて… 七夕は私の中では祭りとしてあまり存在してません。 理由は近年天の川見てない性かと。だから忘れてました(笑) でも、多分シュウはこう言うお祭りの『風情』を 大切にするとも思いますが…結構現実も見てると。 ロマンティストか現実重視なのか際どいキャラなので 凄い今回書きにくかったです。 シュウが本当に叶えたい願いは…貴方の心のなで… 2004.7 竹中歩 |