雨が多いこの時期に結婚するカップルは幸せになれるという
そんな結婚式まつわるジンクスそれはいくつか存在する
『青いもの』『借りたもの』『古いもの』『新しいもの』
これらを結婚する時に身につけると幸せになれるというジンクス

後はブーケにまつわるジンクス…あなたはご存知ですか?





トケイソウ〜passion flower〜





 夏の暑苦しさにいつもより早めに起きたハルカは自分達の泊まっているポケモンセンターがあわただしいことに気づく。
「ん?なんかラッキーとかハピナスが騒がしいな…」
 先ほどからポケモンセンターでは欠かせない存在のラッキーやハピナスが行ったり来たりしている。ハルカは少々の好奇心をそそられ、まだ男子が寝むった個室に一度戻り最終的な身支度を済ますとラッキーたちが一番出入りしている部屋見学に行くことにした。
「わぁ…。」
 そしてそこには……。





 数時間後、ハルカ達の居る街に一人の少年が大通りを歩いていた。
「珍しいな…この季節に雨が降らないなんて……」
 その少年は薔薇がよく似合うと評判のあるポケモンコーディネータ界でも一目を置かれている少年『シュウ』。偶然にもこの街に来ていた。どうやら、ハルカ達とシュウの行動パターンは似ているらしい。
 さほど珍しくは無い通りの概観をシュウは眺めながら気ままに歩いていたのだが何かがすごい勢いで自分の横を通り過ぎ走り去っていった。
「?…今の白い物体は一体?…」
 余りにも早すぎてその通り過ぎた物体の色しか把握できずにシュウはたたずむ。
 そして、何かが自分の視界に入った
「…白い…花?…でも作り物…」
 それは白い花の造花。だが、変な形でリボンが付属している。さっきまではこんなものは落ちていなかったことを考えると先ほどすごい勢いで通り過ぎたあの物体が落としたものと考えるのが普通うだろう。
「ま…関係ないけど追いかけてみたほうがいいのかな?」
 人というのは好奇心旺盛な生き物である。シュウもその一人でその白い物体やらとを追いかけてみることにした。
「(この曲がり角を曲がっていなかったらジュンサーさんにでもとどけるとしよう)」
 軽い駆け足で曲がり角に差し掛かったがやはりその姿は無く、代わりの物が目に入る。
「…教…会…」
 余り大きいとはいえないが、かなり良い造りをした教会。屋根の天辺には金色の十字架が輝いている。そして、その下にはなにやら人が集まり始めていた。
「結婚式でもあるのかな…」
 教会の外で人が集まることと言えば、結婚式かお葬式。しかし、参加者が黒い服ではなく、明るい色の服を貴重としているので、シュウは結婚式とにらんだ。
「この時期は結婚式をする人が多いから不思議じゃないけどね…」
 この雨の降る時期に結婚したカップルは幸せになれるという有名な風習にのっとったのだろう。そんなことを考えていると、教会の垣根のほうからがさがさと大きな人工的な音が耳に入る。音の原因シュウは興味があり、垣根をのぞこうとしたのだが…
「うわーん!!どこにいっちゃのかなぁ…」
 のぞかなくてもシュウには正体がわかった。
「…ハルカ君……」
「げ!!シュウ!」
 珍しくハルカがシュウに会って嫌そうな顔をしている。その理由は今回ハルカのしている格好にあるのだろう。
「…ずいぶん…珍しい格好をしているね…」
「シュウには見られたくなかったんだけどな…」
 ハルカの格好はいつもの赤を基準としたスポーティーな格好ではなく、白いワンピースを基本とし、裾に丸い感じのフリルが扱われた可愛らしい服。あまり見たことのないハルカのその格好にシュウは言葉を詰まらせる
「何してたんだい?こんな場所でそんな格好をして…」
「えーと話せば長くなるんだけど…」










 それは数時間前のこと。
「わぁ…」
 朝早く起きたハルカが見たのはウエディングドレス姿のジョーイだった。話を聞くと今日は結婚式当日らしくそのせいでラッキーたちがあわただしく動いていたらしい。
「おめでとうございます。昨日言ってくれれば私たちも協力したのに…」
「ありがとう。でも、あなたたち夕べ夜遅くにかなり疲れた状態でココに来たから…それにわざわざ言うものでもないし…」
 そういうジョーイだが顔には満面の笑みがこぼれていた。こう言う日が人生での晴れ舞台と言うのだろう。「でもやっぱり、いつ見ても良いですよね。ウエディングドレス…あこがれちゃうかも!」
「貴女にもきっとそんな日が来るわよ。」
「でも当分先だし…心当たりのある男子も居ないし。当分は見てるほうが多いかな?」
 何とか顔の嫌気をふっとばしから笑をするハルカ。そのハルカを見ながらジョーイは一つお願い事を頼む「あなたさっき協力してくれるって言ったわよね?」
「ええ。でも、大抵はラッキーがしてくれてるみたいだし、出番ないですけど。」
「実はね…今日、教会で式があるのだけど…フラワーシャワーをする予定だったの。」
「フラワーシャワー?あの、花弁とか撒く奴ですよね?」
「そう。でも、その担当だったラッキーが夕べ入った急患のポケモンを見ることになって出来なくなってしまったの…出来ればそれをお願いしたいのだけど…」
 ジョーイの言葉に思わず目が点になるハルカ。
「ええー!!私がですか?!だって他にもラッキーとかハピナスとか…」
「今は式を手伝ってくれているけど、元の業務に戻る予定なの。私が居ない間変わりに働いてくれるのよ。それに元々ココは田舎の方だからあまりナースの数も多くないし…出来なかったら出来なかったでしょうがないのだけど…出来ればしたいの。協力してもらえないかしら?」
「でも、見るならともかく、式に参加するのにこんな格好じゃ、逆に失礼だと…」
「そうね…それはあるかもしれない。あ!でもちょっと待って!ラッキー、あの服を持ってきてくれる?」 ラッキーは頷くと少し走っていき、何かをハルカの元に届ける
「これ…は?」
 渡されたのは白一色で作られたワンピース
「今日来る予定だった私の姪御の衣装。だけど、そのこの方にも急患が入って来られなくなってしまったのよ。全く運が良いのか悪いのか…こんなことが立て続けに起きるなんてね。」
 ジョーイさんの一族は知っての通り皆女性はポケモンセンターに勤めている。このようなことが起こっても不思議はないのだが、ハルカと同じ歳ぐらいでポケモンセンターに勤めるのは凄いことだと思う。
「サイズは合うと思うのだけど…お願いできないかしら?」
「丸で私に『その役をしろ!』と言わんばかりの偶然ですね…。わかりました協力します」










「と言うわけ。」
 ハルカの長いといった話は確かに長かった。
「それでそういう格好なわけだね。でも僕に見られたくないって言う理由は?」
「だって、美しくないとか似合わないとか言われそうだったから…」
 ハルカは少しから笑いをする。
「話を変えるようで悪いんだけど、君は何を探していたんだ?」
「ああ!!そうだ!髪飾り探してたの!これともう一個対になってて、そろい花の奴!」
「(やっぱり…そういう予感はしたよ)」
 シュウはあまりにも的を得すぎたその行動に少し笑うが、無言で自分が先ほど拾った花を差し出す
「そう!!これ!!ありがとう。これ返さなくちゃいけないから…もうすぐ式も終わるし。」
「フラワーシャワーは?」
「もうしたよ。それが終わった後にジョーイさんに頼まれ物してポケモンセンターまで走って往復してココにきたら髪飾りがなくなってたの。本当にありがとう。」
「いや……。さぁ、式も終わりみたいだし…君が好きそうなブーケトスがあるよ。」
「じゃあさ、シュウも一緒に行こう!」
 白いワンピース姿のハルカに引っ張られ参列者の一番後ろに陣取る。
「いいのかい?前のほうじゃなくて?」
「だって、ああ言うのって、次に結婚したい人とかする人とかが取るものでしょう?私はまだ当分先だからその人たちに譲る。それにどっちにしたってココじゃ取れないし。」
「君が良いならそれで良いけど…」
「行くわよー!!」
 ブーケトス…それは花嫁が参列者に背を向けて投げる行事のこと。  そして…やっぱり起きるんだよね…偶然は…



 ブーケは風にのり後ろのほうへと運ばれる。



「こっち…来た…」
 ハルカは大きく手を伸ばすがどう考えても届かない。あきらめかけたそのとき、隣の人物が大きくジャンプしてそれを手に入れてしまう。
「…悪いことしたな…前の人たちに…」
 ブーケをキャッチしたのは誰でもないシュウ。そのシュウに参加者の視線は注がれるが、すぐに新郎新婦へと戻る。 
「まさか取っちゃうなんてね…シュウ次に結婚したいの?」
「さぁ?それはどうだか…なんとなく取ってしまっただけさ。はい。」
 シュウは取ったばかりのブーケをハルカに差し出す。
「え?」
「口ではいらないと言いつつ、結局は手を伸ばしたってことは欲しかったんじゃいのかと思ってね。それに僕が持っててしょうがないし。君ならもっと有効に使えると思う。」
「本当に貰って良いの?」
「いらなければそこにいる本当にほしい人たちにでもあげるけど。」
「ううん。貰う。これってさ、ドライフラワーにして持ってると結婚できるって言うよね。」
「あら…結局あげちゃったの?」
 式を終え、ジョーイがあいさつ回りにハルカのもとを訪れる。
「臨時で参加ですが、おめでとうございます。」
 シュウは軽く御辞儀をする
「ありがとう。やっぱりたくさんの人にお祝いしてもらうのってとても嬉しいもの。それにしても…ブーケを『あげた』てことには意味があるのかしら?」
「意味…?ああそう言えばそんなジンクスありましたっけ。」
「あら?ジンクスじゃないわよ?」
 シュウとジョーイはなにやら会話しているがハルカは全く状況が飲み込めない。
「なんのこと?」
「まぁ…数年後にはわかるんじゃないのかな?」
「なによそれ!!」



 珍しく雨の降らないこの良き日に一組の恋人が結ばれた……










「ジョーイさんに言われるまで忘れてたよ。ブーケにまつわるジンクス…彼女に気づかれたら僕の気持ちがわかってしまいそうだったね。まだ、彼女に気づかれては困るから…そっとしておくよ。そのほうが良いと思うだろ?…ロゼリア…」










ブーケにまつわるジンクス
もし、自分が受け取ったブーケを異性に渡すと
それは…
『自分は君と結婚すると心に決めた』
特に教会で誓った想いほど穢れない愛に育つ
彼女がそれに気づくのは当分先のことです









花名≪トケイソウ≫ 花言葉≪聖なる愛≫
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作者より…
6月がジューンブライドだと言うことを忘れてました。
慌てて書いたような気がしますが、
自分の書いた小説には変わりありません。
とりあえず、ブーケトスが書きたかった…
ハルカは取れないと思います。
何となくTVとかでブーケトスを見ると
お嫁に行っていないおば…失礼、
まだ若いお姉さま方が戦う風景に見えまして…
そこに行くだけの勇気は無いと。
そこに運良くシュウが取るという何てお約束なんだ!自分!
あと、ジンクスですがあれは本当か
どうかうろ覚えなので真実はわかりません!
次回はお約束で無いシリアスが書きたい…
2004.6 竹中歩