アイアン・オパール 〜思いやりのある行動〜 「そげなこと言われても困るとよ…」 「でも、これじゃ私の気持ちがすまないわ!」 ホウエン地方…マップに載るのが精一杯な街。そこで二人の少女はなにやら激しい会話を繰り広げていた。 一人の少女はどこにでもいるようなロングヘアーの可愛らしい少女。どうやらこの街に住んでいるらしい。もう一人の激しい方言を使う少女はそのロングヘアーの子に詰め寄られていた。詰め寄られている少女の名前は『サファイア』かなり気性が激しく、口調も少々雑。しかし、とても素直な良い子である。 「だって、あたしそげなつもりじゃ…」 「だけど貴女はそれだけのことをしたのよ?」 サファイアが少女に詰め寄られている理由それはサファイアが少女のポケモンを助けた事から。 少女のポケモンは午後から体調が悪いらしくぐったりとしていた。サファイアはそれを見つけると日頃父親と一緒にポケモンのことを調べていただけあって 直ぐにどこが悪いか見ただけで分かったらしく、すばやくその体調にあった木の実を食べさせた。そのおかげで今は少女の腕の中で幸せそうに寝ている。そしてその少女はその御礼といって治療代を渡そうとして聞かない。 もちろんサファイアはそんなつもりはなかったしあげた木の実も大した物ではないと言い、貰う気は無いと拒絶する。そんなやり取りが既に10分続いていた。 「これじゃ拉致があかないわね…そうだ!」 少女はポケットからなにやらトランプほどの小さな紙切れを差し出す。 「これ何?」 「今、年末でしょ?だからこの街ではくじ引きをやっているわ。これはその抽選券よ。」 「でもあんたがやるんじゃなか?」 「私は良いのよ。ほら、あそこで抽選やってるでしょ?欲しい景品はもう出ちゃってたから。」 少女の指さす方には半被を着た20代位の男性がテントの下で鐘を鳴らしながら福引をアピールしていた。彼女の言うとおり特等から3等までは『終了しました』と言う文字が書かれている。 「これだったら大したお金にもならないし、私がそんするわけでもないから良いでしょ?」 「んー…そこまで言うなら貰うったい。あの6等でも当たればあたしは良かよ。」 6等は『木の実の詰め合わせ』と書かれている。多分そこまで珍しい木の実では無いだろうが無いよりはマシだ。 「良かった。漸くお礼が出来たわ。それじゃ、私は行くわね。」 少女は手を振りながら和やかにその場を後にした…… 「4等が出ました〜!」 青年の声があたりに響く。サファイアはあのあと直ぐに抽選所に行き福引をした。 そして当たったのは男性が声にしている通り『4等』今の所この抽選所で一番上のランクの当選である。 「はい。これが4等。」 そう言って青年が差し出したのは綺麗にラッピングされた『何か』ラッピング生地が布の所為で何が入っているのかわからない。 「これ…何が入っとるったい?」 「あ…実は僕らも知らないんだ。4等にはこの袋をどれでも良いから一つあげるようにって町内会長に言われただけだから。」 その青年の足元にはサファイアに渡された同じ袋らしき物が3つほど段ボール箱に入っていた。…というか、先ほどの返答はいかにも『今回だけ雇われました』と言うようなバイトらしい発言だ。そう思いながらサファイアは歩き始める。 「うーん…大きさと肌触りから言って…服かもしれんね。」 貰った景品はアチャモ程の大きさ。感触は柔らかく布独特のふわふわ感がある。 「…このまま家に送るたい。」 そう言いながら道具を送る施設のあるポケモンセンターへとあしを急がせていた。 その時不意に目の前に人間が立塞がる。 「あんたは……」 「はぁ…漸く見つけたよ。」 ため息をつき何故か軽く息をきらせた『ルビー』が目の前に立っている。 最後に会ったのは何処だろう?既に忘れかけているくらいだ。 軽く補足をするとすればルビーはサファイアが一方的と言っても過言ではないくらい勝手に決め付けたライバル『綺麗な物が好きで汚れる事を嫌う珍しい男の子』…そうサファイアにはインプットされていた。 「何ね?そげん急いで?」 「君を探してたんだよ。全くなんで僕がこんな事を…あーでも僕にも責任はあるわけだし。」 「一人で訳分からん事を…」 「とり合えずさ座れる場所に移動しない?立ち話もなんだし」 「そうさね…確かに雪も降っとることやし。」 二人はそう言いながら近くの公園の屋根があるベンチへと移動した。 「で?用件はなんね?」 「君…その格好でこの地方にいて寒くないのかい?」 「この地方…?ああ、言われてみればそうたいね。」 「さすが野生児…」 「なんか言った…?」 「まぁまぁ。僕も言い争いうをするために態々この地方に来た訳じゃないよ。」 ルビーはサファイアを宥めると自分のリュックとは別に持っていた紙袋を取り出す。 「色んな街を旅するたびに君の伝説聞かせてもらったよ。かなりの場所でポケモンを助けてるみたいだね。」 「だって、痛がっとるポケモンば助けるのは当たり前のことやろ?」 「そうだけど…人はそれが中々出来ないんだよ。君は本当に凄いね。」 「あ、ありがと」 時々厭味を言うけどルビー自体は素直な子ちゃんと思った事はいえるような性格だ。 「で、人伝に聞いたのは君が寒いので有名なこの地方に言ったって言う事。」 「ここ、寒いので有名なん?」 「有名だよ。今年はまだそこまで雪が降ってないけどいつもは積雪凄いらしいよ。」 「ふーん。」 「…それにまだこれから寒い地方に行くんだろう?」 「うーん…そうかもしれんね。これから山の方目指すけん。」 「はぁ、間に合った。」 そう言いながらルビはー紙袋から説明しなら何かを差し出す 「えーと、これが耳あて。これがジャケット、あとこれは手袋。それとオマケでマフラー」 「…何ね?」 「まぁ、その服を作ったのは僕だよ。でも君が暖かい地方に住んでたし、君が長袖が嫌いそうだったから半袖しか作らなかった。それで考えたのが君のような野蛮人はその格好で冬を凌ぐだろうと思ったら居た堪れなくて君に追いつくまでに作ったんだよ。」 「……これ…またあんたが作ってくれたと?」 「一応ね。買ってもよかったんだけど…僕が作ったほうが君に似合うのは確実だから。」 「でも…何で今更…」 「これはね君への『クリスマスプレゼント』今日はイブだろ?」 「…………ああ。忘れとった!」 手の平でポンと手を叩くサファイア。天然ボケの彼女ならあり得る事だ。 「丁度良いかなって思って。」 「でもあたしは何も用意してないったい。」 「別に。これは僕が服を作ったときちゃんと長袖を作らなかったて言う僕の不届きだから気にしなくても良いよ」 「でも、あの服たて、あんたが作ってくれたけん…何かあたしばっかり…」 「へぇー君みたない子でもちゃんとその辺は考えるんだね。」 「悪かったたいね!…そうや!」 サファイアは先ほど抽選所で当たった景品を思い出す。 「こればあんたにやる。」 「これ…何?」 「あたしにも分からん。でも服みたいな感じ。あたしはいいけん」 「まぁ、くれるって言うなら貰うけど…あけて良い?」 「良かよ。」 ラッピングで包まれたそれをあけると…中から出てきたのは白黒ストライプのロングマフラー。 色と良い長さと良いサファイアよりは確実にルビーの方が似合う。 「男もんみたいやね。やっぱりあんたの方が良いと。」 「でもこれ…僕が作った君のマフラーとデザイン殆ど一緒だよ?」 ルビーが作ったマフラーはサファイアのくれたマフラーの黒の部分が赤いだけと言うもの。 「まぁ、よかよ。減るもんじゃなし。」 「確かにね…あ…ほら、雪…」 「…これありがとう…これ暖かいたい…」 この…素直すぎる二人に よきクリスマスが訪れますように… メリークリスマス…… ------------------------------------------------------------END--- 作者より… 未だルビーの性格がつかめません。まぁ、そのうち掴むだろうさ。 それまでは修行だな…うん。今回のお話はルビーが女の子ですよ。 普通作らないだろうマフラー、手袋は良いにしろ ジャケットとか…耳あては流石に買いましたが。 いつも思ってたのが何で長袖作らなかったのかなって。 だったら寒い地方に行くって言ったら直ぐに作るのでは 無いかと思って書きました。根は優しい子です。気持ち的に ルビー 根は優しくて素直な子です。 でも素直さを加減すると言う年齢にあわない行動を とります。ちゃんと言うべき所ははっきり言うと言う 難しい少年です。 サファイア こう言うタイプの女の子大好きです(笑) 素直で気性が激しいです。 恋愛には凄く敏感です。だけど性格の所為で 恋愛に関しては素直になれないという可愛い子 こんな感じですかね? これからも日々精進です。 とり合えずメリークリスマスです!! 2004.12 竹中歩 |