雪合戦





 少年は…唯何もする事を求めず窓際の席に座り、佇んでいた。
 いや、何もしていないというのは間違いだろう。
 ある意味行動をしているにはしているが、それは体を使った動きではなく、『目で追いかける』と言う顔の一部と脳だけで起こされる行動。

「シュウ君は外に出ないの?」
「ジョーイさん…」

 ポケモンセンターでは必須と言わんばかりの存在ジョーイが柔らかな微笑でシュウに話し掛ける。
「どうして僕が外に?」
「だって、サトシ君たちとも知り合いみたいだったし…皆外に出て遊んでいるのにシュウ君だけ外に出ない方が変だと思ったのよ。」
 室内の暖かさと外の寒さで窓には多少の結露が発生していた。
 そんな窓越しにシュウが見ているもの…それはこの寒い中…外で遊ぶサトシ達ご一行4名様+ポケモンたちメンバーは雪合戦をしていた。反射神経の良いサトシは綺麗に避けるが直ぐに隙が出来てしまうようで何度も当たっている。ハルカに関しても似たようなものだ。
「今年は暖冬で雪も中々積もらなくて…漸く積もったのよ。」
「みたいですね。彼女達も『この冬初めての雪合戦かも』なんて言ってましたからね…」
「参加しないの?」
「さっき…サトシ君に誘われたんですけど…僕は…見ての通り寒いのが苦手ですし…」
 確かにシュウは人と比較すればかなりの厚着。それは見れば簡単にわかる。
「そう…。まぁ、自己管理は大切な事だけどたまには外で遊ばないと免疫が低くなることもあるから…もう少し厚着をして外に出れば良いのに。」
「いえ…ここで良いんですよ。だって、彼女達は偶数だから丁度チームに分けれるますからその中に僕が入ればチームわけがややこしくなりますしね。」
 こう言う所は子どもらしくないと思う。シュウは友人達の中に飛び込んでいったりはしないのだろうか?
「…だけど、ハルカちゃんの誘いなら断れないんじゃないのかしら?」
「はい?」
「きっと迎えに来た人が悪かったのね…。」
「あの…ジョーイさん?」
「ふふ…さっきから名前には出さないけどサトシ君達を呼ぶ時まとめて『彼女達』て呼んでいるから…よほどハルカちゃんのことしか目に入らないのか…特別扱いなのかと思ってね。」
 …鋭い。そうシュウの気持ちをからかうときもジョーイさんの微笑みはあいも変わらず。
 そんな話をしていると窓越しからハルカの姿が消えた…。
「そろそろくるかしらね。」
「え?」
「シュウ−−−−−−!!」
 ジョーイさんの予感は的中。雪を体につけたままのハルカがこちらへ向かって走ってくる。
「なんだい?肩の雪もどけないで…」
 座っていたシュウは立ち上がるとハルカの肩についていた雪をはらう。
「お願い!メンバー参戦して!」
「…どう見たって君たち偶数だろ?僕が入ればメンバーが綺麗に割れないと思うけど?」
「でもポケモンとか入ったらサトシのチーム強いんだもん!」
 ちなみにハルカはマサトと組んでおり、サトシはタケシと組んでる。
「それに女子がいるってのに手加減してくれないんだから!だから助っ人お願い!」
「…えーと…僕は寒いの苦手なんだけど…??」
 ふと…自分の首周りが温かくなる。
「男が小さな事気にしない!私のマフラー貸すから!ほら早く!」
 ハルカはシュウの返事を聞かずにそのままズルズルと引きずっていく…
「全く…」
 一瞬は眉間にシワを寄せたが直ぐに微笑へ変わる。そして、ジョーイさんに軽く尺をすると、そのまま出口へと走って行った。  手を振りながら心なしか応援されているような微笑を受けながら…





「シュウ連れてきたかもー!!」
「それじゃメンバー変更な!」
「…僕…シュウと戦いたい…」
「あ!私も!」
「えー!!なら俺だってシュウと戦いたいよ!」
「じゃ、サトシとハルカとマサトがチームで俺とシュウって事で!」
「君たちは話をまとめるのが早いね……」










僕が彼女達と雪合戦を始める頃には雪が深深と降り始めていた…
まぁ…たまにはこんな事も良いかな……










 このあとシュウがマサトとありえないくらいの火花を
 散らしてバトルしたのは言うまでもない…。










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某お祭企画第二段に送りつけた物。
何となくシュウは寒がりというイメージがあったので。
あとは雪合戦でここぞとばかりにシュウに攻撃するマサトが書きたくて(笑)
なんかほんわかした話でシュウハルぽくないですが
そこは皆さんの広い心で受け取ってやってください
2004.12 竹中歩