『他校合同合宿』


  

  油断…そう油断していた。


  彼女には…


  彼女だからこそ


    
  お転婆な彼女を

  好きになる人はいないと思っていたのに…




  まさか…ね…




  「へぇ〜…学園から少しはなれてるけどいい所かも!」

  そう言ってはるかは大きく背伸びをした。


  ここは鳳炎学園から車で30分ほどの山の中。山といっても無防備に

  木々が生え渡っている場所もあれば、少し開けて草原になっている場所もあり、

  牧場らしき場所もある。ハルカの所属する部活『弓道部』は数日の予定で

  合宿に来ていた。毎年恒例となっている合宿。毎年合宿を行う場所は鳳炎学園内に

  設置されている合宿専用の寄宿舎。そこに数日間メンバーで寝泊りして日頃より

  力を入れた鍛錬に励む。だが、今年は場所が違う。

  先ほども言ったとおりココはメンバー全員で専用のバスに乗ってきた山の中。

  何故山の中かというと、今年は合宿を希望する部活が多く、抽選となった。

  …まぁ、ココにいるというのはもちろん抽選に外れたからだ。しかし、

  学校からはなれて自然に戯れた方がいいと思うメンバーが多かったため、

  大して苦にはならなかった。…唯一人を除いては……

  「シュウ…大丈夫?顔色まだ悪いよ?」

  バスから降りて直ぐのベンチに腰掛けたまま頭を抱えている男子が一人。

  男子弓道部でも一際目立つ技術と外見を兼ね備えた少年シュウ。彼は山道が

  苦手である。徒歩や自転車ならなんてこともない。でも、車となって話が別。

  山道のように曲がりくねった場所を車などで移動するとその車の速さが

  自分の感覚とあっていないため耳の近くの神経が異常をきたす。シュウはまさに

  それだった。

  「まさか…合宿の前にこんな事があるなんてね……」

  気分が悪いというわけではなく、頭に激しい頭痛が走るらしい。何度もこめかみを

  押さえる。

  「やわな身体ね…」

  「生憎、君のように神経が荒縄のように図太くないからね。」

  「厭味たっぷりの褒め言葉をありがとう!神経が手術用の糸ぐらい細い人に言われても

   何てことないわ!」

  顔色が悪いながらもちゃっかりハルカに対する愛情表現…基、厭味は忘れないシュウ。

  ここぞとばかりにシュウに追い討ちをかけるような毒舌をするハルカ。

  そんな二人をメンバーはいつものように置いて行く。

  「ちょっと待ってよー!…よいしょっと!」

  ハルカは女子にしては軽装備な自分の鞄と一緒にもう一つ旅行鞄を背負う。

  「なにやってるんだい…?」

  「へ?シュウのも一緒に持ってるのよ。予め弓道の道具や胴衣は学校が持って行って

   くれてるし…一番荷物が軽くて今のところ力がありそうなの私だもん。

   だから持ってるのよ。他に理由なんてある?」

  何事もないようにシュウの物事に対処するハルカ。普通この場ならシュウがハルカの

  荷物を持つシュチュエーションの方があうが、流石のシュウも今はそんなことを言い返せる

  状況ではなかった。













  「はぁ〜!重かった。」

  自分の部屋に入ったハルカは床にへばりつくように座り込む。軽い自分の鞄とシュウの

  鞄を一緒に持てばそれは疲れるに決まっている。来た時とは打って変わって襤褸雑巾の

  ようにハルカが見えた

  「あれ?シュウ君の鞄は?」

  今回のルームメイト自分を含んで3人のうち一人が荷物を整理しながら聞いてくる

  「ああ。男子の部屋って1階でしょ?2階が女子だからココに上ってくる前に置いてきた。」

  「何かハルカってシュウ君に対してだけ喧嘩するのに意外と優しいよね。」

  「何でその話になるかなぁ?何度も言ってるけど…」

  「はいはい。」

  ハルカの素直さは同級生に取ってからかいがいのあるものだ。よく、こうやって

  同級生だけではなく、先輩や後輩にもからかわれる。

  「にしても、ハルカの荷物って軽装備だよね。何で男子と同じくらいしかないの?」

  「私もそれは思ったんだけど…何か忘れてる気が……あれ?皆バスタオル持って

   どこに行くの?」

  「え?今日は一日裏の川原で泳ぐって言ったじゃない。学校だと先生の目も厳しくて

   ロクに泳げないし…ココの川原は凄く水が澄んでて気持いいよ?あれ…ハルカ?」

  「それだぁ!!」

  ハルカの声に一瞬身を引くルームメイト

  「何か忘れたと思ったら、水泳道具一式だ!部活の事しか頭になかったから忘れてた…」

  「あんた絶対に何か大きな忘れ物すると思ったけど本当に大きな忘れ物だわ。でもまぁ、

   泳ぐほどの深さじゃなくて単なる水遊びだから水着なくてもいいと思うよ。

   体操服でもいいじゃない。それかTシャツとか……ね?」

  「でも、お祭好きなハルカが遊び道具に関して忘れるのって珍しいよね?」

  「暇つぶしの遊び道具とかしか持ってきてないよ。カードとか花札とか…」

  少し落ち込んだハルカは鞄から予備の体操服を取り出す。

  「あれ?鳳炎の体操服じゃないよねそれ?」

  「あ…うん。何かあったらいけないって弟が予備に持っていけって。前の学校の体操服。

   男子はね緑なの。でも、本当に予備があってよかった…弟に感謝かも」

  「マサト君…だっけ?かなりしっかりしてるよね!」

  あからさまに違う校章が胸に書かれている。ハルカはそれに着替えタオルを一枚もつと

  ルームメイトと一緒に部屋を出た。











  「ほら!あそこ!」

  女子が団体で現れた時には既に男子が少しの高台から飛び込みをはじめて遊んでいた。

  「うわ!!水が綺麗!魚もいるし!」

  「ココって時たま部活で来るんだよね。」

  「え?!じゃぁ、シュウって毎回あんな風に体調悪いの?」

  「うーん…今回は結構酷いかな?ほら、まだあそこで寝てるし。」

  友人に指差された方向にはみんなの貴重品を固めているテントのような物があった。

  そこで体操服を着てタオルを目の上に置き、休んでいる男子が一人、目に入る。

  「シューウ!」

  ハルカが側に屈み込んで顔色をのぞく。先ほどのよりはいい色にはなっているが、

  まだ体調が悪そうだ。シュウはハルカの言葉に反応して顔からタオルを取る。

  「まだ痛いの?頭?」

  「さっきよりは軽くなってる…もう暫くすればよくなるよ…」

  「ならムリしなくて寄宿舎で寝てればよかったのに…エアコン完備じゃない。」

  「こう言うときは人工の風よりは自然の風の方が楽なんだ。」

  そう言ってシュウはまた目の上にタオルを被せて再び横になる。

  「そう……」

  ハルカはそう残してシュウの近くから気配を消した。











  「漸く治まった…」

  今回の頭痛は多分乗る前に飲んだ酔い止めが効きすぎたのだろう。頭を振りはらい

  シュウは川原の水で顔を軽く洗う

  「ハイ。」

  何時の間にかシュウの背後にはハルカが立っていた。

  「君ね…普通こう言う場合はタオルを差し出すよ…先にジュースを差し出す人なんて

   滅多にいないね。」

  「悪かったわね。だってシュウ、自分で首からタオル下げてるんだもん。」

  ハルカから500mlの清涼飲料水の缶を受け取るとシュウは封を開ける

  「いくらだった?お金払うよ」

  「いいわよ別に。私が好きでやった事だし。」

  「へぇ〜珍しいね。君がそんなこと言うなんて……

  「あんた…一回殴られたい?」

  わなわなと拳を震えさせているハルカ。この状況を見ればシュウが治った事は直ぐにわかる。

  「……それ…うちの学校の体操服じゃないね…色は一緒だったから気がつかなかったけど、

   校章が違う…」

  「漸く気が付いたのね。そうよ。コレは予備、前の学校のやつよ。」

  まるでさっき自分のたちの部屋で繰り広げられていたような会話をリピートするハルカ

  余程珍しいらしい。

  「ハ・ル・カ!!」

  その会話を経たす様にハルカへの呼び声ふっと振り向いた瞬間何か冷たい物が

  上半身に感じる

  「二人の世界に入らないのでよ。寂しいじゃない!」

  ルームメイトがけらけらと笑っている。

  「やったわね!!」

  漸く自分は今水遊びをしに来ていたということを思い出す。短パンがぬれる事も気にせず

  ハルカは水の中へ入っていきさっきのやり返しとばかりに女子に大きく水をかける

  「全く…話の切り替えが早……」

  シュウが目を瞑ったその一瞬が狙われた。彼が目をあけたときには自分の頭は

  シャンプー後のように水が滴り落ちてびしょびしょの状態。

  「治ったんなら、早くこっちおいでよ!相手してあげるからさ!」

  今度はハルカがケタケタと笑っている。

  「…代償は大きいよ。」

  シュウが浅瀬から攻めていくその光景に驚いたのは男子一同

  「シュウが水遊びしてるよ…」

  「あいつ毎回誘っても『辞めとくよ』とか言ってたのに…」

  「ハルカちゃんだろうな…あいつ変えたの」

  










  
  「そろそろ戻らないとお風呂の時間だ」

  一人の女子がタオルで頭を拭きながら携帯を見る。時間は既に夕方の5時を過ぎていた。

  「え?そんな時間なんだ!」

  ハルカもずぶ濡れに近い状態で川岸へと上る。

  「うわ−…こんな小さいタオルじゃ持たないよ…」

  持参していたフェイスタオルは既にびしょびしょ。しょうがなくずぶ濡れの状態で

  一人寄宿舎へと向かう。皆は一度更衣室で着替えて上るらしく、体操服のハルカとは

  別行動。

  「やっぱりお盆を過ぎたら少し寒いかな……」

  その時頭の上に何かが柔らかく乗る

  「?」

  「使っていいよ…僕は足以外水に浸かってないから」

  「いいの?」

  「風邪をひかれて皆に迷惑をかけるよりはマシだからね」

  「まぁ、ありがたく使わせてもらうわ。」

  ハルカが首筋を伝う水分を取り除く。シュウは軽く自分の体操服で顔の水分を

  拭ったそんな二人の前を一つの団体が通り抜けていく。人数は8人程度の男子

  シュウはとっさにハルカを自分の背後へと追いやる。

  「何この団体?」

  「多分他の学校の部活の合宿生じゃないかな…この寄宿舎は他の学校の生徒も使うし…

   確か今日使ってたのは…隣町の『馬術部』だね。」

  「へぇーじゃ、来る時にあった牧場とかに馬置いてるのかな?」

  「かもね…」

  「………」

  シュウが言葉を返したがおしゃべり好きのハルカから返事が返ってこない。

  彼女の表情は一点に集中している。その方向にはハルカと同じ体操服で色違いを

  着ている男子がいた。





  「……キミマロ君?」




  ハルカのその声にその体操服の男子が反応してこちらを向いた

  「あ!やっぱりキミマロ君だ!!」

  「え?!もしかしてハルカちゃん?」

  どうやらハルカの考えは的中したらしくそれは知り合いのようだった。

  茶色い短髪に深いコバルトブルーの瞳。文科系の顔立ちをしている

  「え?どうしてここにいるの?」

  「それは僕が聞きたいよ!」

  二人は和気藹々後話に食い入る。本当に中がよさそうだ



 

  …そう…丸で…恋人と話すかのように……





  危うく取り残される所だったシュウは二人の仲に割って入る

  「ハルカ君…知り合いだったのかい?体操服も同じみたいだし……」

  「あのね、私がココに転校してくる前にいた学校の友達。キミマロ君の方が私より先に

   違う学校に行っちゃったんだけど…こんなところで会えるなんて思ってなかったかも!」

  「どうも初めまして。キミマロです。ハルカちゃんとは前の学校で

   かなり仲良くしてもらってて…今は隣町の学校の馬術部に所属してるんだ…

   それで…君は?」

  人当たりのよさそうなほんわかした空気の少年。少し天然ボケが入っているだろう。

  「…僕はシュウ。彼女のクラスメイトで同じ部活の仲間…と、あとは保護者の

   ような物かな…」

  「保護者って何よ?!保護者って?」

  「君は本当に危なっかしいから特に気をつけてって顧問の先生から承っているからね」

  厭味の入った口調でハルカ挑発するシュウ。その風景にキミマロは心なしか

  苦笑い笑をしていた。

  「仲がいいんだね…二人とも。」

  「コレは仲が良いって言わないの!!悪口言ってるだけじゃない!」

  「悪口じゃなくて『正論』だよ。そこは間違わないで欲しいな…」

  「むっかー!!」

  相変わらず二人の痴話げんかは続いている。

  「そう言えば…シュウ君の着てる服は…鳳炎のだね。じゃぁ、ハルカちゃんは鳳炎の生徒なんだ?」

  「そうよ!また前みたいにいっぱい話そうね!キミマロ君!…と、時間だわ。また明日ね!」

  ハルカはある程度、男子と話すがココまで仲がよさそうに話した男子はシュウの知る限りいない。

  嫌の予感が心の中に残りつつもシュウは寄宿舎へと戻って行った

















  翌日……


  今日から本格的な練習に入った弓道部。しかし、弓道部内はえも言われない

  空気が漂っている。



  一つ 異常に機嫌の悪いシュウ

  二つ 今までにないくらいのシュウの弓道の腕の悪さ

  三つ 朝から顔を出していないハルカ



  昨日の夜ハルカは前の学校で一緒だった男子と再び会えたことを女子に楽しそうに

  話していたので、みなは何となく予想していた。シュウがこうなる事を。

  ハルカは気付いていないシュウの恋心。それは脆くも形になっていない為、一人の

  男子の登場だけでも大きく揺らぐ。それが今のシュウの異常な行動となるのだ。








  

  「ハルカちゃん…遅いね……」

  「そうだね…もう30分の遅刻だよ。いくら彼女でも遅すぎるよ」

  ハルカがいなくても刻々と時間は過ぎていく。最初は飲み物でも買って遅れるのだろうと

  皆思っていた。それがごく当たり前の日常だったから…でも今回は遅すぎる。

  「まさか…的場にくるまで迷ったとか?」

  「え?!だってココまで寄宿舎から一本道だよ?いくら私達と出る時間が

   ずれたからって…」

  「でも…ハルカなら…ありえるよ?」

  そう…女子達が言うようにハルカならありえる事なのだ。

  彼女は道に迷いやすい体質。それがはじめてきた山の中ならなお更のことだ。

  「わ、悪い方向に考えるのは止めよう!とりあえず手分けをして…」

  先輩がそう言ったとき、シュウは動きを止め、弦や弓を傍らに片付けると

  出口の扉を空けた

  「…シュ…ウ?」

  「今…僕は一番自分が嫌いだ……」

  「へ?」

  友人は呆気に取られる

  「彼女のいきなりの友人の登場でココまで…自信が揺らぐなんてね…

   それでも分かってはいる…彼女は何も悪くない。いや…悪い要素はどこにも無いんだ

   ただ…やりばのない…僕の不安だけ。それを結局は彼女自身に怒りとして心の中で

   ぶつけている。何も聞いていないし…何も聞かなかった…聞くのが怖かったんだと思う。

   彼女の中で彼が僕以上に大きな存在なのかと…そんなことを考えている

   今の自分が嫌いだ…」

  「…だから…?」

  「探しに行くよ…本当はいて欲しくない場所だけど…心当たりが一ヶ所ある。

   それに…真実も知りたいし…」

  少し振り向きざまに笑って彼は正装でその場を飛び出して行った  

  

  






  「何か鳳炎の生徒が来てるぜ?しかも弓道の服のまま。」

  そこは隣町の馬術部が練習をしている牧場だった。その声を聞いたキミマロは

  その人物の根源へと馬を軽く走らせる

  「確か君は…シュウ君だよね?どうしたの息をそんなに切らせて?」

  「いや…ココにいると思ったんだけど…」

  どこかシュウの表情は的場を出る以前より明らかに顔色が悪い。

  「誰…が…?」

  キミマロは不思議そうな顔でシュウを覗き込む

  「ハルカ君はココには来なかったかい?」

  「ハルカちゃん?…今日は一回も見てないよ?」

  そのキミマロの一言にシュウの顔色は確実に青ざめていった。

  「どうか…したの?」

  何かをシュウの表情から察したキミマロを下から見上げてシュウは

  「ハルカ君が……いなくなった……ココにいると思ったんだ…だけど」

  「え…?!どうして……」

  いきなりの思いがけない言葉にキミマロも唖然とする

  「理由は分からない。多分迷子になったんだと思う。彼女は道に迷う事だけは

   僕もかなわないから……」

  「あっちゃぁ…そう言えばよく迷ってたな…ハルカちゃん」

  その言葉の一つでもハルカとキミマロが昔よく話していたということが分かる

  だが、今はそんなことを考えている場合ではない。

  「キミマロ君…お願いがある…」

  「何?」

  「馬を…貸して欲しい…」

  「え?何で?」

  「この山道…自転車なんて役に立たないし…馬の方が動きやすいんだ。」

  それは確かである。マウンテンバイクでもない限りこの山道で人を探すのは

  困難だ。だが、この牧場の近辺に慣れている馬であれば、その馬の方が

  動きやすいだろう。

  「でも…馬乗れるの?…それにその格好じゃきついよ?」

  「格好はどうにかなる…馬も乗れるから…お願いだ…」

  その真剣なまなざしと意味ありげな表情…キミマロにはそれを断る事は

  出来なかった。

  「…乗れなくても命の保障はしないからね…ごめん馬を貸してあげて!」

  「いいぜ、俺の持っていきな。」

  「ありがとう!」

  「でも、僕も行くよ」

  キミマロは馬にまたがったシュウにそう言って不意打ちを付くように先に馬を走らせた

  「馬は僕のほうが得意だからね…それに君は袴も着ているし…動きにくい…」




  筈だった…。




  だけど、その言葉に目もくれずシュウの手綱さばきは凄い物で…

  あっという間にキミマロを抜きさった…

  「不得意ではないんだ…それに彼女が掛かっているからね…」

  二人の目的は一緒だ…唯一箇所…ハルカのところへ…

  「やっぱり…君もハルカちゃんのこと…」

  「そうだね…。僕も君と会ったときからそう思っていたよ…

   知らぬは本人ばかりなり…てね。」










  「また迷ったぁ!!」

  山の中で大きく雄叫びを上げる人物が一人。問題の人物ハルカだ

  「何で迷うかな…私…また馬鹿にされちゃうよ…確か数日前にも迷子になったのに…

   私も飽きないな…」



  そう…先生のお使いで隣町に行った時迷子になったけど、助けてくれた…


  だけどその後散々馬鹿にされて…あれ?私…




  「期待してる?探しにきてくれること?」

  山道は結構険しく昼だというのに暗い。なんだか迷っている状況を実感すると

  余計に怖くなってしまい、思わずその場に座り込む。

  「ちょっと…冗談やめてよ……?」

  そのときだった聞き覚えのある友人の声が聞こえてきた

  「ハルカちゃ−ん!!」

  それは昨日久々にあったばかりの友人。こんなところにまで助けに来てくれた。

  ある意味ハルカはそれが嬉しかった。

  どうやら馬はある程度の所まで来て置いて来たらしい。普通に走ってこっちに来ている。

  「漸く見つけたよ…シュウ君に君がいなくなったって聞いて…慌てて探したよ

   さぁ…帰ろう。」

  キミマロが腕を差し出すとハルカもそれに反応して腕を差し出した。だけど…






  ハルカは新たに現れたもう一つの腕の握ってその人物に倒れこむ





  「…見つけた……」

  「……シュウ…君…」

  明らかにキミマロより泥だらけでボロボロだがそれはシュウだった。

  「全く…いくら迷えば君は気がすむんだ?」

  「好きで迷ったわけじゃないもん!!」

  その二人をキミマロは黙ってみるしかなかった……













  「キミマロ?」

  今日で馬術部の合宿は最終日なのでバスで帰る。その中で微妙な表情をした

  キミマロに友人が声をかける。

  「どうかしたのか?」

  「うん……」

  そして大きくため息を付くと

  「でも…これからだよね…。まさか彼女を好きになる人物なんて滅多にいないと

   思ってたから…うん…負けないよ…シュウ君」








  合宿で色んな感情がうごめいた



  焼餅


  悲しさ


  信頼


  ライバル



  まだまだこれから犇めき合う感情…それはどうなるのだろう…



                                    fin



  作者より
  長っ!長いよこれ?
  そしてまぁなんとまとまりの悪い事だろう… 
  キミマロという人間が上手くつかめなかった自分を少し
  恨めしい。
  まぁ、一番書きたかったシーンが書けたので
  良いとしよう。
  袴で馬に乗るシュウと
  キミマロとシュウが視界にはいってシュウの手をとる
  ハルカ。
  この二つがかけたのでそれなりに満足。
  シュウが車に弱いのは繊細だから。高速は良いけど
  田舎道が駄目です(笑)

  今回より登場のキミマロ君です。
  絶対に三角関係にしたかったんですよ。
  彼は小学生時代6年間と中学をちょっと
  ハルカと同じ学校でよく話す男子です。
  ハルカにとっては親友とまでは行かないけど
  凄く仲のいい男子。
  キミマロ君はハルカに恋心抱いてます。
  そして三角関係勃発です(いやっほー!!)
  シュウとキミマロはフェアに戦うそうです。
  ちなみにキミマロの通っている学校は
  頭の良い男子校。隣町にあります。
  これからもがんばるぜべいべ!!

                     2004.8 竹中歩