サボると言う行為に発展したのは…

  彼を見守った所為なのでしょうか?









  『サボり』









  「…?…?」
  あまり見たことのない天井。そして、隔離されるように壁代わりとして
  閉められている暖色系のカーテン。見覚えはあるが思い出せない空間。
  ここはどこだっけ?
  「…えーと…」
  ずきずきと痛む頭を漸く回転させ自分の今日の行動を思いだす。


  確か、家を出て普通に登校して…
  午前中まともに授業受けて…
  昼休み終って…
  それから…?


  「ああ…思い出した。」
  脳裏のほうにあった記憶を引き出して、今思い出した。そうだ自分は…
  「倒れたに等しいわよ。」
  自分が声に出そうとした言葉を先に言われてしまう。
  そう…事の発端は…














  「…シュウ?」
  「……え?」
  昼休み、ハルカは先週の授業がどこまで進んだかシュウに聞いていた。
  しかし、シュウは返事をしたにも拘らずどこか答えは上の空。
  「聞いて…たよね…?」
  「ごめん。聞こえてはいる。」
  「なんかヘンじゃない?今日?」
  「別に?いつもと一緒だけど?」
  絶対そんなわけないとハルカは顔に出すがシュウはあえてそれを否定。
  「…ならいいけど…じゃぁさ、この字なんて読むの?先週ちゃんと聞いてなかったのよね」
  「全く…君って人は…どれ?」
  指さされた文字を覗き込もうとしたときふと頬に自分とは違う人肌が触れる
  「?…なにしてるんだい?ハルカ君…」
  「いや、熱でもあるんじゃないかと思ってね。でも熱は無いかも。私より体温低いし。」
  ハルカはシュウの頬に触れているとは逆の手を自分の額に当てる。
  「普通こう言う場合は額に手を当てるんじゃないのかい?」
  「別にいいじゃない。本当に熱があったらどこでも熱いし。それに、あからさまにそんな
   行動したら、それこそまたみんなにからかわれるの目に見えてるじゃない。」
  ハルカの言うとおり。確かにそんな行動をすればクラスメイト達にからかわれる。
  「確かに…」
  「でしょ?だけど熱は無いにしても、保健室行ってきたら?」
  「行くほどの事じゃない。それに午後の授業が終れば今日は部活もないし帰れる」
  「それまで持つの?」
  「多分ね…。」
  シュウは平気な顔をすると、ハルカに席につくよう言い、そしてジャストタイミングで
  教師が教室に入ってきた。




  「(絶対におかしい!)」
  


  シュウの隣の席のハルカは授業中ずっとシュウを観察していた。
  シュウは肌が白い分、顔が火照ると直ぐにわかる。案の定少し顔が赤いし、
  時々咳き込んでいる。どう見ても風邪なのだが…
  「(当の本人は保健室に行きたがらないし…)」
  手でくるくるとシャーペンを遊ばせながら必死でシュウを保健室に連れて行く
  作戦を練る。
  普通なら保健室でサボる生徒も多い中シュウは滅多と保健室には行かない。
  行くとしたら部活で少し負傷した時ぐらいだ。別に毛嫌いしていると言うわけでは
  無い。多分、シュウという人間が妥協を許さないから。理由があるとすれば
  きっとそれだろう。
  「(…どうやったら行くかな…う〜…って!
    何で私がシュウの為にそこまでしなくちゃならないのよ!)」
  はっと我に帰る。本人が拒否しているわけだ。別に周りがとやかく言う必要は無い。
  そんなのだからきっと周りに夫婦だの恋人だのからかわれるのだろう。
  「(別に肩入れしてる訳じゃないのに…)」
  という感じで考え事をしている隙に五時間目の授業は終了していた。





  「シュウ、ちょっと付き合ってくれない?」
  「…どこに?保健室とか言ったら僕は行かないよ。行くべき時はちゃんと自分で
   判断するから。」 
  「(多分そう言うと思ったわよ…)」
  少し作り笑いで反応を返すハルカ
  「保健室じゃないわよ。職員室。さっき考え事してノートとり損ねてたら、
   先生に罰としてみんなのノート回収して持ってくるように言われたの。
   私一人じゃもてないもん。だから手伝って欲しいかも」
  「…わかったよ。職員室だね。」
  そう言って腰を上げてくれたが、シュウの動きはやはりどこか鈍く、そして重い。
  ハルカの机の上に積み重ねられたノートの三分の二をシュウが持つとハルカは
  無理やりシュウのほうから数冊取り二分の一の比率にする
  「…今日はコレでいいの。」
  「……」
  いつもなら『ありがと〜かも!』とか言いながらシュウに三分の二を持たせだろう。
  しかし、今日は持たせない。
  職員室にノートを届け、帰ろうとした時にその発端は起きた。

















  「???!!シュウ?!」
  「…やはり人の言う事は聞くべきだね……」
  体勢を崩したかと思うとハルカにもたれかかる状態で漸く立っている。
  いくらハルカが人より力があると言っても男子を一人抱える力は無い
  「ちょっと、こんなところでへばらないでよ!私じゃ運べないのよ?」
  「………なら、そのへんにでも置いておいてくれ…気がついたら自分で行くさ…」
  「そう言う問題なの?」
  そしてこのあとから記憶がうっすらとしかない…
















  そして…保健室……
  「そう言えばそんな感じだった気がする…」
  「そう言えばじゃないわよ!あのあと大変だったんだから!運良く保健の先生が
   通りがかって二人がかりであんたをベットまで運んだのよ?あんたは意識
   朦朧としてるし…だから保健室行けって言ったのに!」
  「迷惑かけたね。」
  「全くよ。無理しすぎなのよ…心配かけないで欲しいわ!」
  「…で、意識が戻った所直ぐで悪いんだけど…何で君までが隣のベットで寝てるんだ?」
  そう、隣から話し掛けてくるのはヘンだと思った。傍らにいるのではない。
  仕切りのカーテンを開けて、隣接するベットから話し掛けている
  「まさか…サボり…な訳ないよね?」
  「う…違うわよ!」
  「ならなんで?」
  「………言わない。」
  「言えないようなことでも?」
  そんな風にシュウがからかっているとクスクスと笑いながら保健医がカーテンを
  開け入ってくる。
  「シュウ君より熱があった何て言えないわよね。ハルカさん」
  「先生黙っててくれるって言ったのに!」
  「え…」
  「お互い自分の風邪に気付かないんだから。シュウ君を運んだ時にねハルカさんも
   熱かったから熱をはからせてもらったら…シュウ君は37℃8分なのにハルカさん
   それよりも熱があるんだもの。」
  ふと…教室での会話が頭をよぎる




  「(いや、熱でもあるんじゃないかと思ってね。でも熱は無いかも。私より体温低いし。)」




  「(それじゃ、あの時既に…?)」
  「本当似たもの同士よね。ちょっと待っててお家の人に連絡取るから。今は6時間目
   始ったばかりだから、大人しく寝てるのよ?」
  カーテンを閉めコツコツという靴の音の後にガラッという大きな音を立てて人の気配は
  二人以外になくなった
  「何で先生に黙ってるように言ったんだい?」
  「…だって、シュウのことだから馬鹿にしそうだったんだもん。シュウより熱があって
   平気だった私って本当に馬鹿かも。」
  「…ああ、なるほどね」
  「…馬鹿にしてる?」
  「いや、別に。」
  「あー…でも、コレサボる事になるのかしら?」
  「体調が悪いなら仕方がないんじゃないのかい?」
  「だって、何も言わずに教室出てきたんだもん。しかもシュウと一緒に
   いなくなってるのよ?絶対に何人か一緒にサボってると思ってる。」
  「多分、先生が手を打ってくれてるよ。二人揃って37℃以上あるんだから、
   学校としては強制送還させるしかないし。」
  「そうなのかな…私ちょっと先生に言って来る!」
  「…え?」
  病人とは思えない軽やかな動きでベットから抜け出したハルカは速い足取りで
  保健室を後にした。それと同時に保健医が帰ってくる。
  「…ハルカさん、よっぽどシュウ君のこと心配してたのね。」
  「なんで…そう言いきれるんですか?」
  「う〜ん…例えばね、雪山で遭難したとするでしょ?その時に仲間が負傷して
   看病するわけ。それで、助けが来て二人が安全になったとたん自分も負傷してる事に
   気付くのよ。つまり、大切な人を心配してる時ほど自分の事には疎いわけ。
   だから、そう言えるの。」
  「でも、彼女の場合は単に鈍感なだけじゃ…」
  「鈍感ね…確かに鈍感ね。自分の中にある気持ちが恋に気付いてない…もしかしたら
   あえて気付かないのかもしれないけど。」
  「それって…あの…」
  「これから先は自分で考えなさい。青少年。」
  保健医の言葉が病気で弱った自分の心を打つ。
  「ただいま〜。先生に帰るように言ってきたし、鞄も取ってきた…て、シュウ、
   さっきより余計に顔赤いよ…?」
  「なんでもない…」
  笑いを堪えられない保健医と
  赤面を必死で隠そうとする病気の少年と
  状況が分からない病気の少女。




  正式名称…保健室…

  別名…『サボり場所』…

  更なる別名…『恋の相談所』…


  いろいろなストーリーがある場所です


      



                           END



  作者より…
  保健室がサボり場所と言うのは私の学校がそうだったので。
  切実に保健室利用せれている学生様すいません。
  今回の話はシュウが倒れると言う事で。
  書きたかった保健室ネタ。
  ハルカが倒れても良かったんですが…あの子何があっても
  倒れそうにない元気少女なので。
  それでシュウに倒れていただきました。でも、倒れたのではなく
  意識が朦朧とした…お酒飲んだ時とか睡眠薬効いてきたときのような
  感じに近いですね。
  保健室の先生のイメージは恋愛好きな女の先生です
  ああやって、青少年をいじめてます(笑)
  人間は病的になった時ほど素直といいますので
  シュウはむちゃくちゃ素直に。
  書いててウハウハ(死後)でした。
  また書きたいですね…こう言う少女漫画的お話。
  というか、殆ど少女漫画だよ自分…

                  2004.11 竹中歩