人は切羽詰った時にこそ…

  一番身近な人の顔が浮かぶ。

  彼女の場合…それがきっと…

  彼だったのだろう…








  『宿題』










  「駄目!絶対無理かも〜!」
  力なく少女は自分の机に突っ伏する。
  手にはお気に入りの色のシャープペンが握られていた。
  彼女をここまで悩ませている代物は…学生は逃れる事出来ない宿命のもの
  宿題…英語ではホームワーク。彼女は今これと死闘を繰り広げている。
  ちなみに『彼女』と言うのは鳳炎学園中等部所属の少女『ハルカ』
  栗色の髪ではねっ毛の髪が彼女のトレードマークだ。
  「また、そんなのこと言って…そんなのじゃ絶対に終らないよ?」
  自分の部屋に様子を見にきた弟マサトの言葉が痛い。そう、確かに
  こんな事をやっていても終らないのは事実だ。
  「そんなこと言っても…この理科…結構難しいのよ?」
  「僕に教科書見せないでよ。小学生に中学生の問題が分かるわけないでしょ?」
  「う〜…小学生はいいわよね。糸瓜の種とか朝顔の種とかの部類で。」
  「いつの時代の話してるのさ。小学生は今や英語もするんだよ?」
  「もう!ああいえばこう言う!可愛くないわねー!」
  「お姉ちゃんほどじゃないもん。」
  どうやら口げんかは弟の方が上のようだ。
  「はぁ〜…全くどうすればいいのよ。提出明日なのに…理科の先生怖いのよね…
   友達に聞くにも…この時間じゃ起きてないし…やっぱり明日の朝聞くしか…」
  「明日って…確かお姉ちゃん数学も明日の朝聞くって言ってたよね?」
  「?!そっか!数学が1時間目だからそっち優先させないといけないのよね…
   理科は3時間目だけど2時間目体育だから…やる時間無いかも…うわーん!絶体絶命!」
  日課表を見た後に項垂れるハルカの後姿には既に哀愁が漂い始めていた。
  「だから早めにやっておけばいいのに…」
  「う、五月蝿いわね!マサトこそそろそろ寝なさいよ。もう11時じゃない!」
  「そうだね。お姉ちゃんをこのままにするのはとても心苦しいけど僕は寝るよ。」
  「一々嫌味みたいな事言うわね…嫌味?いやみ…厭味?」
  ふと…脳に一人の友人の姿がよぎる…
  「寝ては無いとは思うけど…流石にこんな時間じゃ迷惑よね……」
  「まさか…シュウのこと考えてるの?」
  「まだ居たの?!」
  「いたよ。別に聞くのはいいと思うけど…貶されるのは覚悟した方がいいよ。」
  「け、貶される…」
  一瞬、シュウに貶される自分の姿が思い描かれたが、今はそれど頃ではない。
  「選択の余地は無いの!」
  ハルカは携帯を手にとると電話ではなくメールを送信する
  「電話だったら確実に起こしちゃうけど、メールならもし寝てても無視するから
   こっちの方が安全よね。」
  「はぁ…本当にお姉ちゃんて鈍感だよね…」
  「何がよ?」
  「別に。それじゃ、僕もう寝るから。」
  そう言ってマサトはハルカの部屋の扉を閉めた。

  「好きな人からのメール無視る人間ていないと思うけどね…。」
  口げんかだけはなく、恋愛感もどうやらマサトの方が上のようだ…

















  「…珍しいな…こんな時間にメールなんて…」
  枕もとの自分の携帯がメールを受信したようで軽やかにメロディーを流している。
  「まぁ、予想はついてるんだけどね…。」
  何故かその顔は嬉しそうで…
  「やっぱり…ね」
  そして表情は『嬉しそう』から『笑顔』へと変わる。
  少年はそのメールを見ると返信ではなく、その相手へと電話をかけ始めた





  「≪シュウ?≫」
  「以外に誰がいるんだろうね?」
  「≪よかった!起きててくれたんだ!≫」
  ほらね、相手はやっぱり決まってる
  「で、どこが分からないって?」
  「≪あのね、マグネシウム・酸素の結びつく質量比の辺りから…≫」
  「あぁ…それね。ちょっと待って。」
  既に明日の準備をした鞄から課題のプリントを取り出しハルカに分かるように
  説明していく。それは答えを教えるのではなく、ちょっとしたアドバイスを
  するような形だった。
  「≪ああ!なるほどね!≫」
  「多分、これで行けば後は楽だと思うよ。」
  「≪ありがとう!助かったかも!≫」
  「…でも、何で僕に電話を?他にもいたはずだろ?」
  シュウの言うようにハルカは消して顔が狭くは無い。逆に広い位である。
  「≪いや、他の子だと迷惑かなと思って。」
  「へー…それじゃ、僕には迷惑をかけてもいいと。」
  電話を通じてもやはりシュウの厭味は健在だった
  「≪いや!そう言う意味じゃなくて…単に…一番最初に顔が浮かんだのよ。≫」
  その言葉に一瞬ドキッとした自分がいる。
  「白羽の矢が立った…という事かな?」
  「≪あはは…ごめんね。こんな時間に。≫」
  「でも…」
  そこに少しの間がうまれ…



  「君の迷惑なら…喜んで買うけどね…」
  


  「≪ごめん!電波障害でよく聞こえなかった!≫」
  「気にしなくていいことだよ。それじゃ、また明日…」
  「≪うん!また今度御礼するね!≫」
  そう言って、携帯はツーツーという電話が終った事告げていた…
  「頼られてる…のかな?」
















  どんな形でもいい。

  君に頼られるのなら…

  例え…宿題という

  安易な形でもね……





                         END





  作者より…

  短くてすいません…詩だと思ってください

  別名タイトル:頼り

  苦手だわ。宿題。
  宿題とかちゃんとこなした事ないんですよ…
  なんというか、長期休みが終ってもハルカは
  宿題ためてシュウに手伝ってもらうというものも
  あったんですが、どちらかと言うと
  日常の宿題にしたかったんです。
  それに、分からなくなってヘルプ求める
  ハルカが何だか可愛いなと思って。
  この頃パラレルばかり書き過ぎて脳みそ
  やられてます…ノーマル書こうかな…
         
            2004.11 竹中歩