衝撃の再会!? 実力テストの復習も終わったある日。 。今日も昼食の場所で悩んでおりました。 「本当ごめんね、!!」 「うんにゃ。しょうがないよ、部活だからね」 私はそう言って、友人を見送った。 あの『男子に囲まれ美味しい時間☆(仮)』から約ひと月。 何とか友人も出来て、教室でご飯を食べるようになったのですが、今日は皆都合が悪かった。 クラスメイトは部活と委員会でパス。 隣のクラスの友人は次の授業が外とかで教室には既にいなかった。 一人で食べることに抵抗はないのだが、どうせ一人で食べるなら静かに食べたいというもの。 この時期人気のない場所と言ったら、普通は屋上と言いたくなるのだが、うちの学校は立ち入り禁止。 代わりといってはなんだが、屋根のない渡り廊下がある。しかし、あの廊下は三年生の管轄だ。二年の自分が行くには勇気が要りすぎる。 さて、どうしたものか。 「……と、まぁ来ちゃったよ」 気づけばいつの間にか足が伸びていました。そう、あの食高校校舎にある狭い食堂です。 聞いたところによると、この食堂は中等部も利用可能。しかし、何度も言うが物凄く狭い。 なので先に来ているグループに空間を譲るというのが慣わしらしい。大きさ的にしょうがないと思う。 でも、逆を言えば、一番乗りしてしまえば誰も来ないというわけだ。 「まぁ、授業終了三分前なら誰もいないでしょう」 早めに終わることで有名な戸部先生に感謝。あの人ご飯食べるのに命かけてるからな。 「さて、では久しぶりに一人の時間でも……」 「誰が一人だって?」 ………Why? 今誰かしゃべりましたか? 扉をゆっくりと開けて、そして閉めました。 うん! 先客がいたら譲らなきゃね。 そう思って、去ろうとしたとき、思い切り首根っこ捕まれた。 あぁ、身長の小さい自分が憎い。 「あ……お前。この前の弁当娘」 「ははははは……どうも」 何か変なあだ名が付いてるけど、間違いではないでしょう。 名前名乗ってなかったし、そんな風に言われてもしょうがないと思う。 そしてこの人は双子さんのどちらかだ。見分けなんて付くはずがない。それだけ似ていたのだから。 「何? また弁当食いに来たの?」 「まぁ、その予定だったんですが、みなさんのお邪魔したら悪いので退散させていただきます」 また前回みたいにお弁当食べにくかったら嫌ですしね。 「なので、首根っこを離していただけるとありがたいのですが」 「まぁ、そう言わずに寄ってけよ。あ、また何かおかず寄こせ」 「ははは、拒否権なしですか」 そんな訳で、今回は確実に捕まりました。 「あ、お弁当の子だ」 「え? あ、本当だ!」 気まずい雰囲気の中、入ってきたのはもう片方の双子さんと、えーと誰だっけ……なんか数っぽい名前だったような……そうだ! 八って呼ばれてた人だ! 「この前はお弁当ありがとうね」 「俺もありがとうな。お礼言いたかったんだよ」 「そんな! 滅相もない! 母親がいたく喜んでおりました!」 これ本当の話。 家には息子がいないので、母親は高校生の男の子などを可愛がる。甲子園とかが良い例だ。自分の出身校でもないのに必死で応援したりする。 なので、あのお弁当のことを話した日はそれはもう喜んだ。 「で? 今日もご飯食べに来たの?」 「えー……まぁ、来たといいますか。捕まったといいますか……」 ちらりと目線をやる。その方向には机に足を上げた双子さんの姿。 それを見て、優しそうな双子さんがため息をついた。 「あぁ、三郎に捕まったのね」 「はい。その通りです」 「そりゃ災難だね。あ、そうだ! 兵助たちが来たらお礼するよ」 「へ?」 「いや、この前のお礼を皆でしようって話になってな」 八と言われた男子生徒が笑う。 「いえ! そんな、申し訳ないですよ!」 「良いから良いから! と、ほら来たぜ!」 「……あれ? お弁当の女の子じゃない」 「あ、お汁粉の子」 まぁ、見事にみなさん好き勝手に呼んでくださって。まぁ、しょうがないですよね。 「なかなか来ないから、もう会えないんじゃないかと思ったよ」 私の横に豆乳を手にした男子が座る。 前回は両脇に誰もいなかったけど、今日は席の都合上両脇に誰かが座らなければならない。 ちなみにもう片方の隣ははえーと……かんちゃん? そんな名前の男子生徒が座った。 そんで持って真正面はきつい方の双子さん。おかずばっちり取る気ですね。 「今さ、三郎と雷蔵でお礼するって言ってたんだ」 「そうだね。お礼しなくちゃ」 「俺もお汁粉のお礼したい」 あぁ、断っているのに、変なところに律儀な男子たちだ。今時珍しい。 「じゃ、僕が何か買ってくるよ。飲み物何が良い? 僕たちの奢り」 優しいほうの双子さんが立ち上がる。もうこうなれば甘えるしかない。 貰えるものは貰っておけ。家の家訓です。 「……えっと、じゃぁお茶。ほうじ茶系が良いです」 「え? ジュースじゃなくて良いの?」 「弁当にジュースはきついんで」 本当はペットボトルのお茶を持っているが、今は持っていないことにしておこう。 カバンごと持って来ておいて良かった。 「それじゃ、お茶ね!」 そう言って彼は食堂を出て行く。まぁ、入り口に一番近いの彼だったしね。 「……で? 今日のおかずは?」 「ちょっと三郎! 失礼だよ、行き成り! ごめんね」 君が謝る事ないと思うんだ、豆乳君。もう諦めてるから。 「今日は珍しいおかずは何も入ってなかったと思いますが……あ」 お弁当の蓋を開けて声を上げる。このから揚げなら珍しいかもしれない。 「これなんかどうですか? うちの夕べのおかずで、冷めてもやわらかいから揚げです。ケチャップとマヨネーズで味付けしてあります」 「じゃ、それ頂戴」 「し、しばしお待ちを!」 とりあえず、爪楊枝を探す。 くそ! 今日は爪楊枝入ってない! しかも、この三郎とか言う人思い切りパン持参してんじゃん! どうする? 「えーと、爪楊枝が見つかりませんので……」 「あんたが食べさせてくれればいいんだけど?」 そう来ますか。そう来るんですね。 何度も言いますが、恥ずかしいのでお断りしたい。キャラじゃないっての! えーと…… 「僕が食べさせてあげようか? 三郎……」 「ら、雷蔵! 早かったな」 「うん。ダッシュしてきたからね」 人って黒いオーラ出せるんですね、今初めて見ました。 ふむ。どうやら、この雷蔵って人のほうが兄なのかな? 「はい、お待たせ。お茶」 「ありがとうございます……。それじゃいただきます!」 「「「「「いただきます」」」」」 別に合わせたつもりはないのだが、全員の声がそろう。 なぜ私はここにいるのでしょうか? たまたま入った食堂で、年上と思しき彼らに捕まっております。 そしてご飯一緒に食べてます。二回しか会ってないのに!! 「あ! そう言えば自己紹介してなかった!」 前回、ちくわをおすそ分けした男子が立ち上がる。 「俺『竹谷八左ヱ門』! よろしく!」 あぁ、だから八と言うあだ名なのか。よし、竹谷先輩。何とか覚えた。 人懐っこい笑顔が特徴の男子。 「俺は『尾浜勘右衛門』お・は・まね。お・は・ま」 あー……確かにそう言いたくなるよね。その苗字。尾浜先輩。尾浜先輩。 ちょっと変わった髪の毛。でも、人良さそう。 「次、俺ね。『久々知兵助』久々に知るで久々知」 ほう。それで久々知と読むのか。先日の豆腐と良い、前回も今日も豆乳と良い、豆腐の好きな先輩だ。久々知先輩。まつげが忘れられなくなりそうだな。 「次は僕だね『不破雷蔵』。こっちの三郎と双子だよ」 人当たりの良さそうな双子さんが雷蔵先輩か。言い分けるために失礼だが、名前+先輩付けにさせてもらおう。 「で、最後私ね『蜂屋三郎』。三郎って読んでくれるとありがたいね」 私のお弁当から、雷蔵先輩の箸を借りてから揚げをもしゃもしゃと食べる三郎先輩。あ、良かった美味しいみたいだ。顔がそう物語っている。 ……ん? 今、雷蔵先輩と苗字違わなかった? でも、人生って色々あるから、きっと何か理由があるんだろう。 なので、ここはあえてスルーすることにした。 「あ、因みに両親離婚してるから、苗字違う」 スルーしたんですけど!? あえて言いますか先輩!? 「そんな訳で、一応双子なんだよね」 すかさず三郎先輩がフォローを入れる。うーん、顔はまったく一緒なのに性格はやっぱり違うなぁ。 「それで、君は?」 久々知先輩が興味津々にこちらを見てくる。 「えーと、です」 お弁当を食べながら自己紹介をする。クラス替え以来の体験だ。 「なら、さんて呼ばせてもらうね」 「お好きにどうぞ」 年下にさん付けとは律儀な人だ。久々知先輩。間違って豆乳先輩と呼んでしまったらごめんなさい。 「それで? 今日はどうしてここに来たんだ?」 お弁当を豪快に食べる竹谷先輩がこちらへと目をやる。 「友人たちが委員会や部活で席をはずしたので、食べる場所を探しておりましたらこの場所にたどり着きました。前回と言い、今回と言い、皆さんの時間を壊してしまって申し訳ありません」 「そうか? 俺は人数が多いほうが楽しいぞ?」 にかっと笑う竹谷先輩。どこかうちの学校の体育委員長に似ている気がする。 「うん。俺もそう思う。でも、流石に密集率高いのかな? 少し暑い……」 尾浜先輩がパンを食べながら手で顔を仰ぐ。確かに今日は暑い。見てみれば、皆さんブレザーなり、セーターを脱いでいる。 私もこの気に乗じよう。そう思い立って、着込んでいたカーディガンを脱ぎカバンへとしまう。 それを見ていた久々知先輩と、雷蔵先輩が同時に飲み物を噴出す。 この二人真正面同志で座っていたので、思い切り飲み物がかかっていた。 あーぁ、雷蔵先輩豆乳まみれだ。久々知先輩もお茶まみれ。 「ちょ、ちょっと待って!? さん、高等部だったの!?」 「え? えぇ。だからこの食堂を使ってるんです。校舎が一緒ですから」 何かおかしかっただろうか? そう思っていると、久々知先輩が手を合わせて、 「……さん、ごめん。俺らみんな貴女のこと中等部の生徒だと思ってた」 必死に謝ってきた。あぁ、そういう事か。 「あの、気にはしないでください。見た目こんなんですから良く間違われるんですよ」 お恥ずかしい話、いまだに中等部一、二年と間違われる。 もう慣れた話だ。 「本当にごめんね! カーディガン脱いで、中のシャツのデザインで分かった」 雷蔵先輩も謝らなくても。 この学校、中等部と高等部のスカート似てるし、唯一見分けるための上のシャツだってカーディガンで隠したら分からないもん。 だからしょうがないんですよ、先輩。 「お気になさらず。どうぞ、ご飯を食べてください」 そう言って自分も黙々とご飯を食べ始めた。 あぁ、椎茸のてんぷらが美味しい。 「さんの心が広くて助かったよ。本当ありがとう」 尾浜先輩が笑いながらこちらを見る。広くはないですよ。単に慣れているだけなんです。 「あと、お前が一年早く生まれてたら俺たちと同じ学年だったのにな」 「はは、そうですね。そうすると三年生になるわけですね」 竹谷先輩の言葉に愛想笑いをして、今度はエビフライをいただく。 お母さん、揚げ物が多いです。 すると、今度は尾浜先輩と三郎先輩が噴出した。 因みに、三郎先輩が吹く寸前で私は弁当を死守。なんなんだ? この二人? 「え? なんで三年?」 尾浜先輩がこちらを見ている。 「え? 皆さん三年生ですよね? 身長高いし、なんとなく対応が」 それを聞いて、竹谷先輩が言葉をこぼす。 「俺ら、二年生だぞ? 今年から二年」 その言葉に今度は私がお茶を噴出した。思い切りむせてしまったが、幸いながら三郎先輩にはかかっていない。 「……どどどどど、同級生ぃ!?」 驚きを隠せず、思わず立ち上がる。 この男子五人グループ、同級生だったのか!? なぜだ!! まったく顔を見たことがないんだが!? 「えーと、俺と勘右衛門がA組。三郎、雷蔵、ハチがB組なんだ。その俺らが見たことないって事は、君C組?」 こくりと自分は頷くなるほど。通りで会ったことがないわけだ。 昨年入ったばかりで、C組にいる私とは接点がまったくないじゃないか。 部活もしてないから、そりゃ知らなくて当然か。 「なんだ、同級生だったのか。敬語と先輩を使ってしまって損をした。特に三郎君とやらに」 「行き成り手のひら返すか!?」 「あれだけ理不尽な態度とられて、年上じゃなかったら手のひらも返したくなる」 「それがお前の本性だな!?」 「本性とは失礼な。久々知君や尾浜君、竹谷君に雷蔵君にはこのままで接するよ」 「このチビ!」 「チビには慣れております」 私はみんなに奢ってもらったお茶をすする。ご飯の後のこの一服が美味しい。 「雷蔵! この女、根性曲がってる!」 「三郎ほどではないと思うよ? それに仲良くしておいたほうがいいんじゃない? さんのお弁当美味しいし。またくれるかもしれないよ?」 「それは……確かに」 おやおや、さすが思春期の男子。食い気には適いませんか。 私が言うのもなんだが、うちの料理は美味しいです。 でも、またあげるとは言ってないよ? 雷蔵君。 「あそうだ! !」 「なんですか? 竹谷君」 「俺らと会ったことないってことは、委員会はもしかして専門委員会?」 「委員会? 委員会なら更衣室委員ですよ?」 この学校には基本となる九つの委員会と。それ以外の小さな委員会が存在する。その小さな委員会を専門委員会と呼ぶ。 「更衣室ってあれだよね? 鍵開けたり閉めたりとかの楽なやつ」 尾浜君の言うとおり、更衣室委員会は非常に楽。 いつも予選会で生徒会と戦うような九つの委員会になんて入ってなるものかと、必死で専門委員会に入ったのを覚えている。 「はい。だからそれを選びました。それが何か?」 その言葉に、癒しの存在となる雷蔵君と久々知君の目までが光った気がする。 「! うちの学級委員会に入れ!」 「そうだよ、さん! 君なら出来る!」 何ですと? 三郎君に尾浜君? うちは、既に他の子が委員長なんですよ? てか、二人とも学級委員会なのか? 「ちゃん! 図書委員会とかどう? 本、好きなの発注できるよ?」 本は好きですが、あの静かな雰囲気に耐えられません、雷蔵君。 「、動物か好きか!? 飼育委員会においで!」 動物は愛してます! でも、虫を扱う飼育委員は無理です、竹谷君。 「さん、管理委員は落ち着いてるよー」 恐ろしい目で微笑まないでいただきたい久々知君。ていうか、管理委員てなんだ!? 五人にすさまじい勢いで詰め寄られる。 この五人、あの『共通委員会』だったのか!? 因みに、共通委員とは基本の九つの委員会の総称。専門委員会ではない委員会だ。 そしてみんなが死ぬほど入るのを嫌っている委員会たち。 体育委員会とか、毎日ありえないような運動量だし、風紀委員なんて、別名ドSの集まりなんていわれてる。 そんな委員会に入りたくないからこそ、更衣室委員を必死でもぎ取ったと言うのに! 「えー……申し訳ないんですが、私は明るく平穏な青春を歩みたいので辞退を……」 弁当箱を即座にカバンへとしまって、扉を開ける。 が、尾浜君に捕まった。 「さん、俺らもう友達だよね」 あぁ、お母さん。 娘はとんでもない人たちが友人になってしまいました。 作者より 思い込みってある意味楽しいですよね。 そんでもって、どこの委員会も人手不足だと思いたい。 2010.6 竹中歩 |